カタルーニャとバレンシアの音楽群[6]—ポストコロナのプロテスト[136]-(松沢呉一)
「カタルーニャとバレンシアの音楽群[5]—ポストコロナのプロテスト[135]」の続きです。
チャランゴ(Txarango)
チャランゴはカタルーニャ各地から集まった人々がバルセロナの路上の演奏で知り合って、2010年結成。その中のメンバーがフォルクローレの楽器チャランゴを持っていたところからこのバンド名に。アルマジロの皮を使った弦楽器です。切ない音が鳴ります。
このバンドに限らずのことですが、スペインのバンドは「ステージ衣裳」という考えがあんまり感じられません。エブリナイトがいつもサスペンダーと赤いバンダナで統一しているくらいか。他のバンドは近所のコンビニに行く時の格好でそのままステージに上がる。
曲名の「Resiste y Grita」は「抵抗して叫べ」という意味。「自由な魂は抵抗する ヤツらがあなたを黙らせたいのなら、抵抗して歌え、叫べ」という歌詞を大合唱。音だけ聴いてもわからんですけど、メッセージがわかるとなおのこと胸熱。
曲タイトルに01とあるのは一曲目ってことです。コンサートの全曲を公式チャンネルがアップしていて、このコンサートでは最初から最後まで客は合唱です。
昨年出たアルバム「De Vent i Ales」(風と翼)から、「A LA DERIVA」(運転)。
映像はインドっぽい。旅の曲なのですが、ルーサー・キング、ビクトル・ハラ、チェ・ゲバラ、ローザ・パークスといった名前が次々と出てきます。旅とのつながりはよくわからん。
もう一曲チャランゴのライブから。
これは抵抗の曲ってわけではなく、アフリカを歌っています。
ここに出ているCor Safariは、スペインの財団がウガンダやタンザニアの子どもたちと音楽でつなぐというプロジェクトをやっていて、それによって結成されたコーラス隊。チャランゴがこれに協力をして曲作りをやったということらしい。
この曲以外でもアフリカテイストを取り入れている曲があって、この経験から得たものかもしれない、
彼らは難民キャンプを回って演奏活動もしています。
フェートゥス(Fetus)
カタルーニャ語でフェートゥスは胎児。英語のFetus。
出たばかりのサード・アルバムより。
前半、そうとはわかりにくいですが、パンクバンドです。
1959年に銃殺されたアナキスト、キコ・サバテ(Quico Sabaté)の物語。キコ・サバテは反フランコの活動家で、警察庁長官を暗殺しようとして誤殺したこともあったようです。誤殺はまずいので、やるなら綿密な計画を。失敗したにせよ、この人物を肯定的に表現すると、テロ肯定で捕まります。
活動資金を得るためにキコ・サバテは銀行強盗もやっていて、このバンドのレーベル名はbankrobber(銀行強盗)。
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