外国人にとって銭湯は今も重要なコミュニケーションの場—新・銭湯百景[12]-(松沢呉一)
「銭湯で聞いた外国人バイトの評価—新・銭湯百景[11]」の続きです。
銭湯で会ったネパール人
先週の土曜日、豊島区の銭湯でのこと。
私が浴槽に入っていたら、あとから入って来たのが「熱いですね」と話しかけてきました。
「そうでもないだろ」
43度もなかったと思います。
「私はやっとこのくらいは入れるようになりました」
「どこの国から来たの?」
「ネパールです」
ネパール人には縁があるな。つうか、ネパール人留学生がいかに多いかです。中国、ベトナムに次ぐ第三位です。この彼も留学生でした。
「ネパールは行ったことがあるよ。ネパールってホテルにシャワーしかないよね」
「はい。高いホテルだと浴槽がありますけど、普通はありません。家にもありません。シャワーだけです」
「そのシャワーも冷たい」
東南アジアでも浴槽のない安いホテルやゲストハウスはよくありますし、なかなかお湯にならないこともありますが、とくにネパールはお湯が出なかったはず。
「日本みたいに熱いお湯は出ません。ネパールは嫌いですか」
彼は自国を悪く言われたのかと思ったみたいだったので、「いやいや、そんなことはない」と慌てて否定しました。
ビザの書き替えは怖い
「時々話すネパール人がいる」といった話から、やがてビザの書き替えの話になりました。時々話すネパール人の学生から聞いていたものですから。
「労働時間がオーバーしただけでビザが下りなかったりするんだってね」
「そうです。学生は週に28時間までしか働けません。それを超えると帰国になります」
深夜のコンビニで3日働けるだけ。学ぶために来ているのだからそれで十分という考えであり、いくらでも働けるようにすると労働目的なのに学生として来日するのが出てしまうことを防ぐ趣旨ですけど、この運用が厳しすぎて、違反が見つかると学生ビザが更新されず、帰国するしかなくなります。
うっかりだってあるんだから、1回目は正座、2回目はグラウンド3周といったように猶予を与えてもいいのに。
「それって黙っていればわからないんじゃないの?」
「無理です。在留カードに全部記録されてしまうのでバレます」
「雇い主が協力してくれればいいのでは?」
「それをやると、会社が捕まります」
そんなに厳しいのか。
「そういうことをしてくれる会社があっても怖くてできません」
借金だけが残るので、帰国はなにより怖いのです。
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