松沢呉一のビバノン・ライフ

不安な時代の宗教の役割—緊急事態宣言に抗する[回顧編 2]-(松沢呉一)

コロナ禍の信仰—緊急事態宣言に抗する[回顧編 1]」の続きです。

 

 

 

充実した緊急事態宣言へのプロテスト

 

vivanon_sentence

宗教団体の勧誘は話しているうちに喧嘩になることが多いのですが、声をかけてきた顕正会の桑原君は仕事のあと、いつも2時間ほどここにいるそうです。こんな時でも折伏に余念のないアンチ緊急事態宣言プロテスターなので、私の仲間です。

それだけでなく、彼は押し付けがましくもなく、人の話もちゃんと聞くし、質問をすると正直に(受け取った印象では)答えてくれるので、この時は最初から最後まで友好的に話しました。

顕正会は池袋でよく勧誘をしていて、ここから板橋区の常盤台に連れていき、本格的に折伏するわけですが、常盤台は東京の本部で、教団の本部は埼玉県なんですね。

「大宮公園にあるんですよ」

「おお、いいところだね。あそこの動物園はサイコーでしょ」

「そんなのがあるんですか」

「なにしに大宮公園に行ってんだよ。大宮公園に行ったら動物園だろ。あんな楽しい場所がタダだぞ」

パリに行って凱旋門を観ないようなものです。凱旋門は観なくていいかもしれないけど、大宮公園に行って動物園を観ない選択はない。わかりやすい例を挙げると、江戸川区の行船公園に行って自然動物園を観ない選択がないのと同じです。なお、上野動物園や井の頭自然文化園は有料なので立ち寄らないことも許されます。

ホントにどうでもいい会話だったがゆえに、充実したプロテストでした。

この日、私はマフラーをしていて、建物の中に入る場合は口を覆うこともありましたが、池袋ではゆるんで口が出たままでした。宗教団体の信者と接するにしては無防備ですが、外ですから。

そんな無防備な人間に声をかけるのはどうかとこっちが心配になったのですが、屋外ではいいんじゃないですか。そんなことより、もっと未来のありそうな若者や金のありそうな大人に声をかけた方がいいと思うのですが、人通りが少なくて、彼としてはなんでもよかったんでしょう。

 

 

「顕正新聞」を読む

 

vivanon_sentence「この人にいくら言っても無駄」と悟ったためかもしれないですが、電話番号を聞かれることもなく、帰りに「顕正新聞」をくれました。一面に「元旦勤行」という集まりの報告が出ています。例年は元旦だけやるのですが、今年はコロナ対策のため、2日に分けて人を分散させたとあります。

でも、写真を見ると、けっこう詰まってます。横は1メートルくらいは開けてます。映画館の席一人分よりもう少し開けている感じ。

前後は膝から前の人の尻まで最短30センチくらい。マスクをしているので、お経を唱えても唾液が前の人の後頭部に届くことはないでしょうが、エアロゾル化したウイルスで多数感染することもありそうです。

一番前にいる偉い人はマスクをしていないですしね。

でも、いいんですよ。これで皆さん納得しているんだから。

 

next_vivanon

(残り 2264文字/全文: 3471文字)

ユーザー登録と購読手続が完了するとお読みいただけます。

ウェブマガジンのご案内

会員の方は、ログインしてください。

« 次の記事
前の記事 »

ページ先頭へ