カタルーニャとバレンシアの音楽群[17]—ポストコロナのプロテスト[147]-(松沢呉一)
「カタルーニャとバレンシアの音楽群[16]—ポストコロナのプロテスト[146]」の続きです。
オゼ(OZHE)+H.カミノ(H.KAMINO)
読みはオーゼかもしれない。オゼは単独の曲が見当たらず、「¡LIBERTAD PABLO HASÉL!」でそのあとに登場するH.カミノというラッパーとよくやっていて、以下はそれにパブロ・ハーゼルが参加した曲。
2013年の曲なので、パブロ・ハーゼルは見た目もラップも若く、髪の毛も多い。今まではあまり感じなかったですが、他の2人との比較のせいか、録音のせいか、パブロ・ハーゼルは声の通りが悪い。
坊主がオゼ。野球のバットを持ってます。トゥリバーデのMVでもバットが出てきましたし、他にも何度か見ていて、武器としてだけバットがスペインで流通していたら面白い現象だなと思ったら、スペインは野球がわりと盛んらしい。中南米の野球の強い国々の選手がスペインに渡っているためとのこと。
「VIDAS AL LIMITE」は「限界に生きる」という意味のカタルーニャ語なので、全員カタルーニャだと思います。
パブロ・ハーゼルがラップを理由に最初に逮捕されたのは2011年ですから、それを踏まえてましょう。
この曲は歌詞が公開されていて、ゲットーに住んでいる「私」は「もう限界」として、強盗や党本部を焼くことをほのめかしてます。悪い人たち。
アルマ X(Arma X)
H.カミノは上の曲で終わらせて、次は2009年のアルマ Xの曲。
Armaはスペイン語で武器。スペイン最速ラッパーとおとぼけラッパーのコンビ。歌詞は不明ですが、タイトルの「Zona Minada」はカタルーニャ語で「採掘ゾーン」。採掘場で撮っているっぽい。
アルマXは、最近は活発な活動はしていないのか、MVが見つかりません。
アルス・モリス(ARS MORIS)
アルス・モリスもパブロ・ハーゼルとやってます。
CCCPのTシャツ、やめれ。
パブロ・ハーゼルの右腕に小銃のタトゥが入ってます。バルトニクは左の腕に似たタトゥを入れています。示し合わせて入れたのかとも思ったのですが、同じデザインではなく、パブロ・ハーゼルの腕に入っているのは文字による小銃です。腕に小銃のタトゥを入れるのはこの辺の人たちの定番なのではなかろうか。
この曲の2017年にはパブロ・ハーゼルの裁判が話題になってました。
これは歌詞が公開されています。「ヤツらはオレらが意思表示するまでは表現の自由を与えてくれる」「ヤツらがオレらの表現のためにオレらを刑務所に入れたらオレらはもう歌わない オレらは銀行を襲う」と言ってます。
「何を勝手なことを」と思う人もいるかもしれないけれど、この論理は正しいと思います。表現の自由があるから、「不満があるなら表現をしろ」と言えます。民主主義的手段が保証されているから、「暴力反対」と言えます。それがないところでは不法な手段をとるのが出てくるのは当然。ヒトラー暗殺計画を私は否定しない。
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