松沢呉一のビバノン・ライフ

キラキラネームはただの雑誌の影響との説—男の名前・女の名前[付録編4]-(松沢呉一)

名前の国際化・姓の名前化・性の逆転化—男の名前・女の名前[付録編3]」の続きです。

 

 

日本では?

 

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本編で見たように、英語圏、独語圏でジェンダーニュートラルな名前が増えている理由は「性別が明らかな名前は本人の選択を狭める」「とくに社会的成功という意味での女の選択を狭める」という考え方の浸透や、名前の自由化が進んで「親がつける名前は仮のもの」という感覚が出てきていることに関わっているかもしれない。また、名前の短縮化が関与しているかもしれないことも指摘しました。

しかし、日本のキラキラネームは事情が違いそうです。

明治安田生命による名前ランキングから「2020年の名前ランキング」。

 

 

 

 

 

ヤバい、女子の1位から読めない。「陽葵」で「ひまり」って読むのか(他にも複数の読みあり)。キラキラ。「向日葵」の「向」をはずして、その分、「ひまわり」の「わ」も外し、「日」を「陽」にしたってことなんですかね。だったら、「陽鞠」でよくね? 鞠という字が難しいか。

「陽葵」は2010年に初登場53位、2013年に9位で初めてベスト10入りし、1位は今回初です(ここに出したランキング参照)。

これがどこから始まったのかわからないのですが、昨今の名前のトレンドは、「たまごクラブ」が作り出しているようです。その結果、「陽葵」が1位になったのだとすると、ちょっと情けない。

個性を求めて、どこにもない名前としてキラキラネーム化が進んでいるなら肯定できるのですが、なんのことはない雑誌の受け売りかよ。そこからもうひとアレンジを加えるとかして欲しい。そうしている人たちもいるでしょうが。

しかし、そんな名前が1位になるのは、米国同様に、ポピュラーな名前は避けられるようになって、数多くの名前に分散し、ベスト10に入る数字が低くなってきているためではなかろうか。かつては由美子や久美子、真理子といった名前がクラスに1人はいて、全国の数字でベスト10入りしたのが、今は学年に1人いるだけでベスト10に入れる、みたいな。

あとの名前はすべて学年に一人もいないくらいに名前の独自性が強まっているのは、いいことのような気が私はしてしまいます。「潜在的エゴティズム」の効果で、周りに合わせようとする気が少しは減って、自分の判断で行動できるのが増えて行きそうです。楽観的すぎますかね。

 

 

男の名前の方がジェンダーニートラル化しているかも

 

vivanon_sentence見た目の印象でしかないですが、男の子の名前で女の子も使えそうなのは「樹」「蓮」「新」か。律子があるんだから、女子で「律」もそう無理はない。4個。それはそうと、「律」って伊藤律を連想させて、古臭い気がするんだけれど、そんな名前を連想する人は少ないのか。

 

 

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