松沢呉一のビバノン・ライフ

性差を作り出してきたのは一人一人の選択—男の名前・女の名前[17]-(松沢呉一)

トランスジェンダーに見る名前の強制性—男の名前・女の名前[16]」の続きです。

 

 

自分自身が決定してきたかもしれない不利益

 

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また間があいてしまいました。「サイレント・エピデミック」シリーズと内容がクロスする部分があるので、あっちを先に一段落させました。「サイレント・エピデミック」第二部を始める前に、こっちを進めておきます。

名前による潜在意識への働きかけはここまでで十分ご理解いただけたでしょう。

名前ごときがすべてを決するはずもないし、意識が無意識を乗り越えることがしばしばあることは繰り返し指摘してきた通りです。「女(男)と間違えられる名前だから男(女)らしくしよう」といった意識が働くことも大いにありそうです。

それでも無意識下では名前が個人の意思を規定している部分があることは否定できそうにない。無意識下のことなので気づきにくいのだけれど、その影響が想像をはるかに超える規模であることが「潜在的エゴティズム」というワードとともにだんだんわかってきています。

すでに論文が出ている商品の選択、住む場所の選択、恋愛の選択のみならず、進学や就職時の選択までを決定している可能性があります。そして出世するか否かまでを左右しているかもしれないわけです。

第三者が名前に影響される可能性とともに、自分自身がそう決定している可能性があることに着目すべきです。しばしば人は自分の不利益を他者のせい、社会のせいにしたがりますが、そうではなく「あなた自身が決定しているんですよ」ってことです。他人や社会に責任に押しつけて楽をするために、いよいよ不利益が持続しているのかもね。

※2021年4月1日付「女性自身」 メキシコで行なわれた、米人夫婦主催の子どもの性別を発表するパーティで飛行機が墜落して2名が死亡という記事。いろんな疑問が湧くわけですが、海上を飛ぶ小型飛行機がピンクの煙を出したら女の子、青い煙を出したら男の子ということになっていて、ピンクの煙が出たので「女の子だっ!」と皆が喜んでいるところで飛行機が海に墜落という惨事になったもので、この動画も公開されています。騒ぐためのネタであり、性別発表で騒ぐこと自体批判されるべきとは思わず、好きにすればいいですが、今までにも事故がいくつか起きていて、死者が出ています。そのパーティを企画している会社があるようで、発表方法が大掛かりなほど盛り上がるための事故であり、企画した会社の人だけでなく、親族が亡くなったケースも。なぜ命懸けでそこまでするのかよくわからん。

 

 

日本の名前

 

vivanon_sentence親が子どもに期待するものを名前に込める時に、少なくともこれまでの日本では男児に対しては強さ、逞しさを意味する「剛」「巌」「勝」「健」といった漢字を使用し、女児に対してはとくに優しさ、美しさを意味する「優」「美」「花」「咲」といった漢字を使用し、それらと男であることを明示する「男」「夫」「郎」「介」「也」、女であること明示する「子」「代」といった漢字を併用してきました。

以下は、明治安田生命による名前ランキングから、半世紀前、1971年の男女の名前のベスト10です。

 

 

 

とくに女児には「〜子」「〜美」という二種の選択しかなかったことがよくわかります。これに「〜代」を加えると全体の9割を超えていたでしょう。

 

 

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