松沢呉一のビバノン・ライフ

ロマンスを求める軍人キム・カストロ(Kim Castro)ちゃんに注意—詐欺が流行り[下]-(松沢呉一)

紀州のドンファンの元妻とか小室なんとかさんの母とか—詐欺が流行り[上]」の続きです。

 

 

 

「国際ロマンス詐欺」の報道についての疑問点

 

vivanon_sentence国際ロマンス詐欺」で、疑問に思った点があります。

報道を見ると、被害者は圧倒的に女です。「ん、これまたサイレント・エピデミックでは?」と勘が働きました。

検索すると、結婚を前提とした「国際ロマンス詐欺」の被害者は、男より女の方が倍以上多いという調査が出ていますが、一方で女より男の方が倍以上多いという調査も出ています(いずれも海外の調査)。

なぜ真逆の結果が出るのかについて調べてはいないですが、国によって違うのではなくて、データのとり方の違いだろうと推測できます。警察のデータや報道を調べると女の方が多くなり、ランダムに男女をサンプルにした調査では男の方が高くなりそうです。つまり、現実の被害は男の方が多いのではないか。

「結婚を餌にした詐欺師に、会ったこともないのに、100万円を騙し取られた男性」と聞いても「バカじゃなかろか」と思う人が大半でしょう。私もそう思います。

「結婚を餌にした詐欺師に、会ったこともないのに、100万円を騙し取られた女性」と聞いても私は「バカじゃなかろか」と思いますが、世の中には被害者が女になった途端に同情する人が出てきます。「女子供バイアス」です。

男の被害者としても「オレはバカだなあ。こんなことを言っても同情されず、バカにされるだけだから黙っていよう」と思うのが多いはず。また、「国境を超えた犯罪では警察に行ってもどうしようもない」と過去の事例に照らして黙る率が高くなる。

対して女は同情されることがわかっているので警察や諸団体に泣きつき、メディアも食いつく。

その結果、表面化するのは女の被害者の方が多くなるだけで、実際には変わらない、場合によっては男の方が多いのでは?

あくまで仮説。

※2021年2 月21日付「inews」 英メディア。逆の結果が出ている調査もあることに触れつつ、この記事が取り上げている調査では、男の被害者の方が女より2倍以上多いとのこと。

 

 

被害者の正確な男女比を知りたい

 

vivanon_sentence人を騙す立場になればわかります。

相手は男でも女でもいい。金を出せば誰でもいい。こういう詐欺は餌をばらまいて、食いついてきたのをカモにするので、男女問わず狙うはずです。

男はキャバ嬢や客引きやらに騙され続けているので、少しは警戒心が働き、「騙されやすいのは女」という法則があって、結果、狙われるのは女に偏りがあるかもしれないけれど、一方で「一般に男の方が自由になる金がある」「男は被害に遭っても警察には行かないし、騒がない」という法則があれば男を狙います。

どちらもそれほど明確な差がなければどちらも狙う。報道のように「被害者は圧倒的に女」は考えにくい。

「国内ロマンス詐欺」だと会ったり、電話で話したりして信用させるということも出てきそうなので、自分の性別を偽るのを避けそうですが、「国際」となるとその心配はない。「会いたい」と言い出したらこっちのもの、「来月大金が入るんだけど、今はすぐに使える金がないので、金を振り込んでもらえないか」と言って金を得ればそれまで。一生会わなくていい。

なんとかこれを確認する方法はないものか。犯人側の証言があればいい。しかし、「国際ロマンス詐欺」は犯人が捕まることはほとんどない。条約等の取り決めで、加害者側の国に捜査を依頼することができることもあるでしょうが、重罪に限られるはずで、詐欺ごときでは動いてくれない。

※2019年10月15日付「神戸新聞NEXT」 この記事に出ている人は被害に遭う前に気づいていますが、男です。「男も狙われるが、警戒心が働くので被害に遭わない率が高い」のか「泣き寝入りしているだけ」なのか、どちらでしょうね。

 

 

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