松沢呉一のビバノン・ライフ

法を適切に廃止し、改正することを妨げる処罰感情の肥大—処罰感情が肥大する時代[上]-(松沢呉一)

ボツにした記事の発掘が続きます。

今回は2019年7月のボツ記事です。「暴力団員の子どもは入社させないのが正しいのか?—懲戒の基準[31]」の続きとして書いたのですが、話がズレるために独立させ、そのまま出すタイミングを逸したようです。タイムリーなネタを扱うと、他を出しているうちにネタが古くなってしまうことがよくあります。しかし、内容は今も通じるので、復活させました。

 

 

 

処罰感情の高まり

 

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なぜ岡崎聡子は14回も逮捕されているのか」「なのになぜ実刑は2回だけなのか」の謎について石丸元章に聞いた内容は「銭湯で知った田口淳之介と小嶺麗奈の愛の行方—懲戒の基準[31]」に追記しておきました。Facebookに書いたのとほとんど一緒です。

彼の話はさすがに説得力があります。自身、覚醒剤で逮捕されたことがある人間が周りにいると、自分ではわからないことがすっきりと解消されて助かりますよ。シャブで逮捕されたことのある人、火炎瓶を投げて逮捕されたことのある人、人を殺して逮捕されたことのある人を周辺に配備しておきたい(人を殺したのは今現在いないですが、火炎瓶はいますし、大麻は複数います)。

薬物で逮捕されるのがいるたび、石丸元章はコメントを求められ、マスコミも視聴者も読者も大いに助かっていますが、不祥事を起こしたら復帰すべきではないと考える人々に従えば、彼も物書きとして消えていたわけです。

処罰感情が強まっていることについては彼も憂いております。彼が逮捕された1995年の段階では、出版においては干されたり、予定されていた本が出なくなるということはなかったそうですが、今だとどうなるかわからないと言ってました。とくに雑誌はスポンサーのからみがあるので切られるのではないかと。そうかも。別名を使えばわかりゃしないけど、そこまで引き受けてくれる編集者は減っているかもしれない。

改めて言っておきますが、物書きだって芸能人だって、悪いことをやったら叩かれるのは当然として、しかるべきのちに復帰するのはいいだろが。覚醒剤はともあれ、大麻だったら全然悪くないので、叩く必要もない。

※単行本が執行猶予中に発売された石丸元章著『スピード

 

 

人を殺した克美しげるが復活できた時代

 

vivanon_sentence克美しげるは殺人の刑期を終えてからカラオケ教室を始めたことまでは知ってましたが、石丸元章によると、懐かしのヒットみたいなテレビ番組にも出ていたとのこと。克美しげるの殺人は同情の余地が微塵もないひどいものなのですが、それでも復帰。

YouTubeにありました。

 

 

いっぱい「人殺しを出すな」とコメントがついてますが、昨日今日の番組じゃないんだから、観なきゃいいだろ。

私にとっても、殺人は別格感があって、テレビに出すべきではないと言いたくなるのはわかりますが、それでも「出すな」とは言わない。反社会的勢力の宴会に出ただけで復帰もまかりならんという人たちが過半数を占める今の時代では、人を殺したら、人目につくあらゆる活動を封じられそうです。見沢知廉も今だったら作家にはなれなかったかもしれない。佐川一政は言うに及ばず。

確実に社会は鷹揚さ、寛大さを失っていますし、刑罰はなんのためのものなのかを理解できなくなってます。

 

 

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