松沢呉一のビバノン・ライフ

温存された排外主義と人種差別意識が移民によって強化されていく構図—ベルント・ジーグラー著『いま、なぜネオナチか?』[4]-(松沢呉一)

ドイツ共産党の反ユダヤ主義もユダヤ人の大量虐殺もなかったことにされた—ベルント・ジーグラー著『いま、なぜネオナチか?』[3]」の続きです。

 

 

 

国家人民軍がネオナチ育成機関と化していた

 

vivanon_sentenceインゴ・ハッセルバッハは自らの経験に即して刑務所がネオナチ育成機関になっていたことを自著で指摘してましたが、ベルント・ジーグラー著『いま、なぜネオナチか?』では東ドイツの国家人民軍の兵役がネオナチの供給源になっていたことを指摘しています。もっと大掛かりであり、もっと公的に育成されていたのです。

事実、ネオナチのメンバーは一般の兵役義務よりも長く兵役を果たす傾向があったことも指摘しています。彼らにとってはネオナチ活動のための軍事訓練であり、人材ゲットのまたとない場ですから。

ネオナチ活動家の親たちは党、人民軍、国家保安省、警察に勤めている傾向もあって、家庭内で培った価値観を軍隊で完成させます。

東ドイツではファシズムは根絶されたとしていたのですが、ナチス独裁が共産主義政党の独裁になっただけ。なんのことはない、政府も国民もせっせせっせとファシズム、ナチズムのメンタリティを再生産していました。

これがネオナチを生み出していきます。

※「Rechts und Radikal – Warum gerade im Osten?」にたびたび登場するインゴ・ハッセルバッハ。東ドイツの刑務所で、自分が体験した刑務所の話をしているところ。それにしてもヤツは老けたなあ。って友だちか。

 

 

封印された東ドイツの青少年調査

 

vivanon_sentence東ドイツの教条的歴史観の中で、生徒は何を考えていたのかについて、「青少年の政治的・歴史的態度一九八八年」という調査報告書が作成されているのですが、党幹部にとってはあまりに衝撃的な内容だったために極秘文書扱いにされています。

たとえば10%以上がファシズムにはいい面もあると評価したそうです。その程度はいてもおかしくはなくて、そんなに衝撃的でもないと思ってしまいました。独裁であれ、全体主義であれ、ある局面だけを取り出せば「いい面」はあるでしょう。ナチズムも同じ。

これに異論のある人はウイルス対策において中国共産党を褒め讃えた人たちがいたことを想起していただきたい。ナチスの経済対策がうまくいったのも中国が経済発展したのも独裁であったがゆえです。

 

 

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