松沢呉一のビバノン・ライフ

歳をとるとウンコが漏れやすくなる—戦後ドイツに見る「私」と「社会」の分離-(松沢呉一)

 

ウンコを漏らしました

 

vivanon_sentence昨日は雨が降っている時間帯もありましたが、おおむね天気がよかったので、買い物がてら、あっちフラフラ、こっちフラフラしていました。椎間板ヘルニアが悪化していて、歩いている時に足に攣るような痛みが走ることがあるのですが、一瞬立ち止まれば治まります。

そろそろ帰るかと思い、タンドリーチキンを買い食いしながら歩いていたら、急に便意に襲われました。下痢ってわけではなくて、朝からウンコをしていなかったせいです。下痢ではないですが、慢性的に軟便なので、気をゆるめると漏れます。

ここでの選択肢はふたつ。ひとつは今来た道を戻ってコンビニのトイレを借りることです。徒歩2分。もうひとつは進行方向にある公園のトイレを使用することです。徒歩3分。

過去を振り返ることより未来を見ていたい私は後者を選択しました。そしたら、トイレまであと1分足らずのところで漏らしました。なんとかパンツを汚さないように、しりたぶを閉じたのですが、トイレに着いて確認したらべっとりパンツを汚してました。死にたい。

パンツを汚したこともさることながら、たったの3分を耐えられなかったことがショックでした。

漏れたのは一部ですから、残りのウンコをしたあと、パンツを脱いで下半身すっぽんぽんになって、改めて便器に腰掛けたまま考えました。歳をとるってこういうことだなと。

※2019年7月5日付「NHK」 ここに出ている症例と今回の私のおもらしは別レベルですが、原因は同じ。括約筋の衰えです。

 

 

後ろを振り返るのか、前を見るのか

 

vivanon_sentence老化の第一は括約筋が弱くなっている点です。いくら力を入れても漏れてくる。

続いては弱くなっているのに自覚できていない点です。あの時点で3分はもたないと判断して道を戻ればよかったのに、「3分ならもつだろう」と楽観した点にも老化が表れています。自分の限界がわからなくなるのが老化です。

今からでも頑張ればオリンピックに出られるような気がするのは間違いです。Facebookですんげえ美形から友達申請があって、「まだまだイケるな」と喜ぶのも間違いです。それは国際ロマンス詐欺です。

歳をとると、先を見ていても明るい未来などない。ウンコを漏らすだけです。このことを学んで人は過去を振り返るようになり、懐メロを聴いて、昔話をして、思い出に浸って、ウンコを漏らさなかった時代を懐かしみます。

しかし、そうしたところで肉体も精神も衰えているのであって、これは過去への逃避でしかない。ウンコを漏らさなかった若さがよかっただけなのに、「昔はよかった」と時代がよかったかのように語るような人間には決してなるまい。

ウンコを漏らしても前を見続けよう。そう誓いながら、ノーパンで帰りました。

※2019年7月5日付「NHK」 これを見ているうちに、もしかすると椎間板ヘルニアによって筋力が弱ることもあるのではないかと思って検索してみたら、その可能性もあるみたい

 

 

「ナチスの時代はよかった」と振り返るドイツ人たち

 

vivanon_sentence戦後ドイツの衝撃は「ナチスの時代はよかった」と振り返る人たちがいっぱいいたことです。「ハイル・ヒトラー」とやった党員たちだけではありません。ナチスに批判的だった人、たとえば元共産党員や元社会民主党員もよき時代として振り返る。

 

 

next_vivanon

(残り 1848文字/全文: 3247文字)

ユーザー登録と購読手続が完了するとお読みいただけます。

ウェブマガジンのご案内

会員の方は、ログインしてください。

« 次の記事
前の記事 »

ページ先頭へ