松沢呉一のビバノン・ライフ

ハンブルクとミュンヘンとウィーンのフィエラー・グルッペン(四人組)—白バラとともに知っておきたい人たち-(松沢呉一)

 

 

みっつのフィエラー・グルッペン

 

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ナチスドイツでの抵抗運動は、白バラ抵抗運動、共産党系運動、国軍内暗殺計画グループ、ユダヤ人救済運動などがよく知られていますが、それ以外にも、私が不良系と呼んでいる抵抗運動があったことはこれまでにも見てきた通り。

しかし、それらを合わせたところで、抵抗運動のほんの一部でしかありません。白バラ抵抗運動にも近い個人主義的抵抗運動は多数あります。ドイツでは本になっていても、日本では読むことができないので、これらはインターネットで探すしかなく、そういった人たちをできるだけ見ていきたい。

下に出した写真は、抵抗運動のひとつ、ヘルムート・ヒューベナー・グルッペと呼ばれるハンブルクの4人組のうちのルドルフ・ヴォべヘルムート・ヒューベナーカール・ハインツ・シュニベの写真です(もうひとりはゲアハルト・デューヴァー)。

 

 

英語版WikipediaよりThe Hübener Group, l-r: Rudolf Wobbe, Helmuth Hübener, Karl Heinz Schnibbe, ca. 1941 

 

 

第二次世界大戦が始まって、国外のラジオ放送は聴くだけでも重罪となりますが、1941年、彼らはBBCのドイツ語放送を聴いて、そちらに真実があると確信して60種ものビラにして配布

翌年逮捕され、写真中央のヘルムート・ヒューベナーは17歳にしてギロチンで処刑されました。ナチスドイツで最年少のギロチン処刑者でした。

以下はヘルムート・ヒューベナーのドキュメンタリーです(2002年)。

 

 

 

モルモン教徒によるグループ

 

vivanon_sentenceハンブルクにはさまざまな抵抗グループがありましたから、その影響、あるいはどこかと連帯して動いていたのかとも思ったのですが、まったくの独自グループのようです。

彼らはモルモン教(末日聖徒イエス・キリスト教会)の信徒でしたが、モルモン教の支部長は熱心なナチス支持者であり、教会に「ユダヤ人お断り」の貼り紙を出し、ヒューベナーを除名にした経緯がありました。

戦後、モルモン教会は亡くなった彼を迎え入れるのですが、モルモン教会の反逆者扱いをしたのですから、さすがにデカいツラして「われらの誇り」とは言えないでしょう。

こういうことをすると、学長が「新しい女」を敵視し、研究会を潰したくせに、平塚らいてうが評価されるとともに手のひらを返して学校の誇りであるかのように扱う日本女子大になってしまいます。

ヘルムート・ヒューベナー・グルッペはフィエラー・グルッペンとも呼ばれたのですが、これはドイツ語で4人組の意味です。

フィエラー・グルッペンと呼ばれたのは、ハンブルク以外にミュンヘン、オーストリアにもいて、たまたまどれも4人組で、抵抗の方法も似通っていただけで、面識も何もなかったようです。

※Ulrich Sanderb『Helmuth Hübener – Für Wahrheit und Gerechtigkeit』 ヘルムート・ヒューベナーの評伝。タイトルは「真実と正義のために」

 

 

ミュンヘンのフィエラー・グルッペン

 

vivanon_sentence.ヘルムート・ヒューベナーはドイツで評伝が出ていて、小説仕立ての評伝も出ていて、英訳もされていますので、少しは知られる存在のようですが、決して広く知られる存在ではなく、私もWikipedia読書をしていて気づきました。日本語版には移植されていないので、英独版です。

ミュンヘンとオーストリアのフィエラー・グルッペンはさらに知られていない。

ミュンヘンのフィエラー・グルッペンの中心人物だったヴァルター・クリンゲンベックはカトリックです。父親とともにバチカン放送を聴いていて、第二次世界大戦によって聴くことを禁じられて以降も彼は聴き続け、16歳から17歳の同僚たち3名とともにBBCのドイツ語放送も聴くようになります。

彼らは電気関係の技術者の見習いだったため、BBCの情報をビラにして配布したのみならず、海賊チャンネルからフランスの音楽や反ナチスのプロパガンダ放送を始めます。実現はしなかったのですが、模型飛行機を使ってビラをばらまくことも計画します。

BBCのドイツ語放送は連合国の勝利を意味するVサイン(ドイツ語の「勝利」はSiegなので、ドイツではVにそんな意味はない)を使用するように呼びかけ、彼らはそれに呼応して、Vの文字を落書きしていきます。

 

 

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