松沢呉一のビバノン・ライフ

デスボイスの革命性[下]—ビョークが主張する音楽業界のセクシズムは存在するのか?[ボツ編2]-(松沢呉一)

デスボイスの革命性[上]—ビョークが主張する音楽業界のセクシズムは存在するのか?[ボツ編1]」の続きです。このシリーズのボツ編はたぶんこれで終わりです。

 

 

 

土台になるジャンル自体が男仕様

 

vivanon_sentenceもともと圧倒的に男が強かったロックの世界に入り込んできた女のミュージシャンは、「不良」「暴力」「重厚」「アウトサイダー」といったイメージが強い男のロックとの差別化をする必要があり、とくにメジャーシーンでは、ポップさだったり、ヴィジュアルだったりを売りにするケースが多くて、歌謡曲仕様、アイドル仕様になっていく傾向があります。女子プロで、ミミ萩原キューティ鈴木が人気を得たのと同じ。

これは声という決定的なものと関わっていて、女声はロックという男文化が作り出した作法にそのまま乗ることはできない。音楽業界のセクシズムによって、きれいな声を出すように強いられたのではありません。ロックは男の様式で作られてきてしまったので、そうなるのは半ば必然です。

よく言われることですが、ロックジャンルには「不良」「ヤンキー」「暴走族」マーケットがあります。キャロルダウン・タウン・ブギウギ・バンドクールス横浜銀蝿氣志團といった流れ。X JAPANもちょっとこの領域に足を突っ込んでますし、湘南乃風もそうでしょう。

レディース仕様のバンドがいてもいいし、実際いますが、レコード会社が手がけ、テレビの常連になるほどのマーケットはないのだろうと思います。夜の国道を暴走するには男女差はさほどないかもしれないですが、歌を歌うと急にかわいい声になってしまって様にならない。

不良の香りのするキャラはいますけど、男のように体中にタトゥを入れるのは女子にはハードルが高い上に、世間からも受け入れられにくい。「不良でありつつ、相当に美形」といった緩衝が必要です。つまりはアイドルの売り方に近づいて顔出し率が高まるわけです。

これに象徴されるように、ロックというジャンルはもともと男女不均衡であって、それが歌詞や売り出し方の差になっています。音楽業界がそれを強調し、演出していくことはあれども、ビョークが言うほどに、歌詞が制限されているなんてことはないのではなかろうか。私もよくはわからんですけど、この解釈で十分にロックにおいての男女の顔出し率の差は説明できてしまいます。

ここから少しずれたのがヒップホップで、ここでは不良色が強いのが王道で、女子も不良臭のするのがいっぱいいますが、話が飛ぶので割愛。

 

 

メタルにおけるふたつの選択

 

vivanon_sentenceそんなに熱心に聴いているわけではないですが、新曲が出るとBABYMETALはYouTubeでチェックしてます。

大人になってから、ほとんどメタルは聴かず、せいぜいスラッシュ系のものを聴いていたことがあるくらいです。ましてメタルの女性ヴォーカリストにはまったく興味が抱けず。

でも、BABYMETALは別格。ついこの間まで私はアイドルなんてものにまったく興味がなく、BABYMETALもアイドルとして興味があるのではなく、音として面白い。

男仕様のロックに合わせようとするのを放棄して、そこともっとも距離がありそうなアイドルをまんま合体させることで、新しい世界を作り出すことに成功しています。

もう一方で、時々聴く女性メタル・ヴォーカルはデスメタルです。

男のデスメタルも好きなのですが、女のデスメタルは輪をかけて好きです。

From US To Sunsetはもう活動していないですが、ロシアのバンドのようです。

 

 

 

夢に出そうだべ。女のデスボイスに最初にハマったのがこの曲でした。

たぶん息を吸っているのだと思うのですが、笛のような声が出ています。デスメタルは声の可能性を拡大しているのが魅力。声の可能性の拡大という点では、ディアマンダ・ギャラスのメタル版とも言えます。

 

参考映像。

 

 

 

デス・ボイスに戻って、以下はスコットランドのCerebral Boreってバンドですが、このヴォーカルもごっついです。

 

 

デスボイス、サイコー。

 

 

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