松沢呉一のビバノン・ライフ

セックスしない夫のホモ疑惑—同性愛者が異性と結婚した場合[上]-[ビバノン循環湯 583] (松沢呉一)

これは2000年前後にネットに書いたものです(誰のことかわかりかねないので、後半はネットには出していないかもしれない。時間が経ったのでもうわからんでしょう)。なぜこれを循環しようと思ったのかと言えば小倉東(マーガレット)のことを考えていたためです。小倉東が認知症になったことについては知ってからずいぶん経って「「外で飲み会をやろうぜ」と酒を飲まない私が言わないではいられない時代—新宿パトロールと遺跡巡り」に軽く書きましたが、軽く済んでいるわけではなく、「触れにくいけど、ついつい考えこんでしまう話」になってます。

よく「ホモは差別用語だ」「オカマは差別用語だ」と無条件に決め付ける人がいますが、これに対しては「「ホモ」を差別用語にするな—心の内務省を抑えろ[6]」で説明した通り、歴史的経緯を考えた時に、その言葉に執着する世代の人たちを否定するようなことはできない。その言葉に差別性がくっついている場合は批判していいとして、その差別性があって初めて問題になるのであって、それを抽出することができない人が安易に言葉のせいにしていて、そこから差別性のない表現にまで因縁をつけることになっているのだと思えます。

この辺については編集者時代の小倉東と話したことがあって、彼もおおむね同じようなことを考えていて、だから「オカマルト」なんて店の名前にしたのでしょう。簡単には否定できない言葉なのです。また、彼はホモという言葉も好んで使っていて、「ホモ」と「ゲイ」は意味合いが違うのだと彼に教えられました。「ホモ」は行為を指す言葉、「ゲイ」はそれより広くライフスタイルなどを含めている言葉。なるほどなと思いました。意識してなくても私自身そのように使っています。

たとえば行為を表現するビデオは「ホモビデオ」がしっくり来ます。上司の男が部下の男に迫るのは「ホモセクハラ」。「ゲイパレード」とは言っても「ホモパレード」とは言わない。ハッテン場の中でホモパレードが開催されることはあるかもしれないですが。人を指す場合、下半身のことだけを特化する時は「ホモ」もありとして、あとは「ゲイ」。

ということを思い出して、名前は出していないですが、そのことに触れた原稿を循環することにした次第。

図版は男と男、女と女のチューの写真を集めてみました。いつの時代も、どういう組み合わせでも、チューはいいですね。

 

 

結婚して一度もセックスがない

 

vivanon_sentence今年で30歳になった女友だちから電話があった。彼女は、声を潜めて、こんな悩みを打ち明けた。

「ねえ、聞いてよ。実はうちのダンナ、全然セックスしないの。どういうことだと思う?」

ちょうどこの時、同性愛についての原稿を書いていて、自分の話も加えてくれと言わんばかりのタイミングのよさである。

「そりゃ、ホモだな」

思わず私はこう言った。セックスがないだけでこう決めつけてしまうことは安直だが、事情を聞くと、いよいよそうとしか思えないのである。

ちなみに性行為そのものを指す場合、私は「ホモ」をしばしば使う。全体としての人を指す場合は「ゲイ」。これは知人のゲイから教わった用法であり、差別だのなんだのとは無関係である。

彼女は昨年結婚していて、結婚以来、一度もセックスしてない。夫は、結婚前から淡泊ではあったが、それでも月に一回から二回はしていて、結婚後はまったくなくなって、あちらはしようともしない。

彼女としても性欲がさほど強くないから、最初のうちは「これでもいいか」と思っていたのだが、30代にもなると不安も高まるってもんだ。

一生このままかと思うととても耐えられない。セックスをしようともしない夫への不満は日に日に高まり、彼女が「ねえ、セックスしようよ」と迫ったりもしたが、「疲れている」などとお決まりのセリフで逃げるばかりだ。

ベッドの中で彼女の方から幾度か試みたことがあるのだが、挿入の前に萎えてしまい、あちらは早々に諦めてしまう。そして最近は「浮気をしてもいい」とさえ言っているという。

Vintage Gays

 

 

オナニーをしている痕跡もなし

 

vivanon_sentenceセックス以外は結婚前と全然変わりなく、仲もいいというので、夫が彼女のことがいやになったというわけではなさそうだ。徐々にしなくなったというならまだしも、結婚後ずっとしないというのだから、あまり聞かない例かと思う。

浮気している様子もまったくない。人間の心理としては、浮気していれば、それがバレないように、なおのこと家庭内セックスをしっかりやろうとするものじゃないか。少なくとも結婚前のペースは保とうとすると思う。人によるか。

 

 

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