松沢呉一のビバノン・ライフ

日本人がオーストラリアでセックスワークをする理由—スカーレットロード[ボツ編]-(松沢呉一)

「外国人セックスワーカーの孤立—スカーレットロード[追加 1]に続けて書いてあったのですが、このシリーズも長くなったので「もういいか」になったんだと思います。「日本での実現性を考える—スカーレットロード[追加 2]」「オーストラリアと何が違うかを考え続けたい—スカーレットロード[追加 3]」もボツにしたものを復活させたものですが、あれで話が終わっているので、引き続き、この回はボツのままでした。映画とは大きく離れますが、単体で見たら面白い内容かと思います。

 

 

言われなければ気づけないこと

 

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前回書いた「(オーストラリアでは)外国人セックスワーカーは同国人との接点を持とうとしない傾向がある」という話は、言われれば「あー、そうか。日本でもそうだな」と理解できます。出身国によっては、外国人同性愛者も同国人との接点を持とうとしない傾向があるのと同じです。

では、外国人セックスワーカーが全員横のつながりを避けるかと言えば、もちろん、そんなことはない。国によっても、個人によっても、業種によっても、状況によっても違います。

日本で堂々セックスワークをやっている外国人には永住権を取得しているのが多くて、女王様にもいます。というと、「偽装結婚か」と思う人がいそうですが、女王様については偽装結婚はいないでしょう。金のためにやるんだったら、もっと儲かることをしますから。

フランス人だけでも2人会ってまして、彼女らは雑誌の取材もOKでしたから、いたってオープン。

女王様なら、医療者しか使用できないことになっている医療器具を使用したり、乳首の切除など医療行為に抵触しかねない行為をしたり、殺したりしない限りは捕まるリスクは少ないですし、日本人の夫も知っていて、自国でばれたところでどってことはないと考えていましょう。

個人の環境による差、個人の考え方による差があり、業種の差もあり、法律の差もあって、SMであり、永住権を得ているために彼女らはおおっぴらに活動ができますが、そうじゃないとなかなか難しい。

日本人が国外に出た時も同じです。たとえばすでに永住権を取得していて、なおかつオーストラリアではなお残る違法領域に踏み込まない限りは売春で捕まることはありませんから、リスクは軽減されて、国外退去になることはない。同国人にどう思われようと知ったことではないと考える人は増えるでしょう。そうなると、あえて同国人と仲良くしようと思う必然性も減りますけど。

しかし、永住権を得ていないと、同国人とは交流せず、個人行動になりやすい。

※Frances Boyle , Shirley Glennon , Jake M. Najman , Gavin Turrell , John S. Western著,The Sex Industry: A Survey of Sex Workers in Queensland, Australia (Routledge Revivals)』 クィーンズランド州のセックスワーカー221人に聞き取りをした調査。オリジナルは1997年のもので、その再刊。

 

 

日本人留学生がオーストラリアでセックスワークをする率

 

vivanon_sentence同性愛者はツールの発展により、一対一で会うことが可能ですから、その範囲ではアジアの人たちもフットワークが軽くなってます。日本に観光に来て、アプリを開いて相手を探してパンパンパンと。日本人が海外に行っても同じ。互いに気に入る相手がすぐに見つかるとは限らないし、地域によってはそういったアプリが使えなかったりもするみたいですけど。

実のところ、セックスワークもそうなってきています。欧米のセックスワーカーたちはノリが軽いっすよ。日本に観光で来て、ついでにアプリで客を探して旅費や滞在費を稼いだり。場合によっては所持金を増やして帰国したり。

そういうアプリでは英語が共通語になっていて、その点、日本人は弱いということあるのですが、それだけではなく、リスク回避の心理が強いので、日本人で海外に出て、アプリで客を探しつつ、旅をするのはそうはいないでしょう。でも、条件が揃えばそうします。

前回登場のオーストラリア在住の彼女もまた日本人セックスワーカーとのつながりがないため、日本人がオーストラリアでどのくらいセックスワークに従事しているのか正確にはわからないのですが、ざっくりとした推測はしています。この数字に驚いたのですが、話を聞いて納得しました。

 

 

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