松沢呉一のビバノン・ライフ

中国共産党の独裁が続く限り環境破壊は止まらない—ポストコロナのプロテスト[ボツ編1]-(松沢呉一)

不織布のマスクをして「海を守れ」とやる鈍感な環境団体—ポストコロナのプロテスト[2]」の続きとして書いてあったものです。XR(エクスティンクション・レベリオン)についてはさらに書き溜めてあったのですが、これ以降はすべてボツにしました。「不織布のマスクをして「海を守れ」とやる鈍感な環境団体—ポストコロナのプロテスト[2]」の末尾にその事情を書いてましたが、問題の範囲が広すぎて収拾がつかなくなったのです。と思っていたのですが、今読み直すと、ほとんど完成しています。判断がつきかねるのは「環境問題そのものをどう考えていいのか」というテーマです。これは一朝一夕で答えが出せるものではなくて、そこをどう考えるにせよ、XRの問題点は挙げておいた方がよさそう。私がXRに批判的な点は多岐に及び、マスクはその導入に過ぎず、導入だけ出しておくと、いかにも些細なことで批判しているように見えてしまうなと思い直したので、復活させておきます。

時制は2020年9月のままにしてあります。

 

 

 

中国を外したところで対策を練っても地球環境は悪化する

 

vivanon_sentence環境問題については人生の残りが少ない私でも気にはなるのですが、解決については簡単ではなく、これについてはもう諦めています。軽く考えて解決する問題ではなく、本腰を入れて取り組むしかないですが、そこまでの熱意を傾けられない。ただ、若い世代は諦めることはできないですから、その世代が奮闘するのは当然で、それを揶揄するようなことはしないと決めています。

それでも、XR(エクスティンクション・レベリオン)については杜撰すぎ、軽卒すぎ、無神経すぎて一言言わないではいられない。XRは若い世代だけが参加しているのではなく、中心メンバーはいい歳です。

30年ほど前までは、世界の環境問題は破壊している国々である先進国が集まって基準を出し、各国が自国に持ち帰って対策をとれば解決しました。それもなかなか足並みが揃わなかったわけですが、原理としてはそういうことです。

しかし、もはや中国抜きでは語れない時代になりました。

今まで発展途上国は「先進国はさんざん環境を破壊して発展したんだから、今なお破壊し続けている先進国が自分らで規制しろ」と主張し、それが通ってきたわけですが、今やCO2の最大排出国は中国です。第2位の米国の2倍。日本の9倍。人口が多いので当然ではあって、人口比では米国が1位です。そろそろ抜かれましょうが、日本の方がなお中国より多い。

日本や米国は多くの国民が消費生活をして、車に乗って、飛行機に乗って、その利益を得ていますが、中国は都市部と農村部の落差が今も大きくて、農村部の人たちは消費活動も低く、移動もそれほどせず、利益も得ていない。都市部の経済活動が消費と利益を得て、中国産を使用している他の国々の人々も恩恵を受けているわけですが、中国はまだCO2排出を増大していく余地があります。事実、中国政府は貧困エリアの解消を謳っています。

中国を抜きに、世界の環境問題は語れない。

※グラフは全国地球温暖化防止活動推進センター作成のもの

 

 

XRはなぜ中国擁護をするのか

 

vivanon_sentenceでは、XR(エクスティンクション・レベリオン)は中国についてどう考えているのかを検索したら、XR・UKのサイトに「WHAT ABOUT CHINA?」というページがありました。

 

 

中国が化石燃料の国内使用と海外での石炭インフラストラクチャーの開発を通じて世界のCO2排出量に大きく貢献していることは否定できません。ただし、中国は再生可能エネルギーにも多大な投資を行っており、現在、太陽光パネル、風力タービン、電気自動車の主要な生産国、輸出国、設置国です。

あなたがこれを読んでいるときにあなたの周りの家庭用品のいくつに「中国製」という言葉が刻印されていますか? 2005年の中国の排出量の3分の1は、輸出向けの商品に関連していました。中国の内需が拡大するにつれ、過去15年間に割合がいくらか減少した可能性がありますが、英国や他の裕福な国々では、大量の炭素集約型製造を中国に委託しています。

 

 

傾聴すべき内容もありつつ、この一文は中国に対する楽観的擁護にしかなってない。

まず前段について。再生可能エネルギーに投資していることで、CO2最大排出国の非難を逃れるのであれば、ほとんどの国も同様。一切やっていない国なんてないでしょ。中国はその効果も出ていないのに、なぜ中国のみが特別扱いなのか。欧米各国に対してはああも激烈な抗議をしておいて、中国に対してのみこの寛大な姿勢は解せない。

後段について。たしかにCO2を出す生産物は安い人件費や土地代をメリットとして先進国が中国に工場を作り、あるいは中国の企業に生産を発注することで自国のCO2排出量を減らした側面はあるでしょう。

しかし、このまま行くと、中国では安い人件費の確保が難しくなり、中国企業はアフリカに工場を作ってさらに安い人件費で製品を作ることになるため、CO2排出量はさらに増大していくのですから、他国に製造を委託する構造自体をストップするしかない。

 

 

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