松沢呉一のビバノン・ライフ

男湯と女湯の違いは日本社会を反映している—タトゥの男女差[4](最終回)-(松沢呉一)

タトゥの反応は男湯と女湯でまったく違うらしい—タトゥの男女差[3]」の続きです。

 

 

 

女湯の知られざるルール

 

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勝っても負けても、オリンピックで自分の出番が終わると、選手たちは燃え尽きて虚脱状態になるのだと思います。そういう時はセックスをして自分を取り戻します。しかし、コロナ禍ではセックスを禁じられている選手団もありそうで、今回は辛い時間を過ごす選手が多いのではないでしょうか。

私も22日に高円寺パンデットであったイベントで燃え尽きて虚脱状態です。そうも力を入れていたわけではないですが、東京の銭湯制覇は足掛7年、東京ヘビマップは間が抜けつつ、10年以上続けてきて、そのふたつが昨年終了した重みは大きい。終わった段階ではあっさりしていたのに、ずいぶん経ってからのこのイベントで改めて「すべて終わったな」との実感がありまして、銭湯やヘビマップについて公開の場で話すのもこれが最初で最後だと思うと感慨深い。もう一回やってくれと言われても、あれ以上、話すことがねえわ。

しばらくツイキャスの映像は観られるようですので、オリンピックに興味のない人は観るとよろしい。

自分の話はわかっているのでもういいとして、衝撃だったのはゲストを迎えての女湯の話です。まずは訂正です。ゲストのにせぽよが「もういい加減にしてくださいね」と銭湯のおばちゃんに言われて、そこに行けなくなったと書きましたが、その後もめげずに時々行っているそうです。神経が太いです。

にせぽよは全身にいろんなタトゥが入っているので、ジロジロ見られるのはわからんではないのですが、もう一人のゲストであるれいな先生はタトゥが入っていないのに、やはりおばちゃんたちにジロジロ見られることがあって、時には「前を隠しなさい」と注意されることもあるとのこと。

以前女子に聞いた話では女は意外に隠さないということだったのですが、主みたいな人の方針で隠すのが礼儀ということになっている銭湯もあるらしい(れいな先生の陰毛事情に関わっているかもしれないのですが、男が陰毛を全剃りしていても、ジロジロ見られることはありませんし、そうしている時期に私自身、注意されたこともありません)。

午後3時とか4時とか、銭湯の口開けの時間帯は、常連さんたちばかりで、「なんだ、こいつは」といった視線を感じることが私も稀にはありますけど、極々稀であり、まして独自のルールがあって、それに反すると注意されるなんてことは皆無です。

女湯の方が銭湯内コミュニティが強く、れいな先生によると、女湯では物々交換が恒常的になされている銭湯もあるそうです。決まったロッカーがそれ用になっていて、そこに買いすぎた野菜や作りすぎた煮物が入れてあり、常連さんはそれをもっていってよく、その代わりに自分も提供するシステムです。時には生肉も入っているそうで、「腐るだろ」と思いますが、常連さんは早い時間に集中するので、すぐに誰か持っていくのでしょう。

※にせぽよの血しぶきと目玉のタトゥ。以下もすべてにせぽよのタトゥ

 

 

女のタトゥを抑制しているのは女である

 

vivanon_sentenceそういった助け合いがあると同時に怒鳴り合いも見られるとのこと。男湯で怒鳴り合いなんて見たことねえわ。その場にいない人の悪口をたまに聞くくらい。派閥間の抗争もあるのかもしれない。

どれも一部の銭湯のことではあれ、そういった銭湯では排除も行われ、しばしばそこではタトゥは敬遠されるのです。この日、客で来ていたカメラマンの酒井よし彦の妹もタトゥが入っていて、女湯でいじめられて泣きながら帰ってきたことがあるとのこと。

タトゥを入れているようなあばずれは女という枠組から排除です。レズビアンやトランスジェンダーを許容しないタイプのフェミニストはこういうおばちゃんたちと一緒です。「女はこうあるべし」というフレームが強固なのです。これはすなわち女に強いられる道徳です。

女のコミュニケーションはおせっかいやパターナリズムと紙一重、排除とも紙一重。伊藤野枝が銭湯で労働者階級の女たちから排除された時代と今もそうは変わってません。

この時にもしにせぽよが「前につきあっていた男の影響で入れたんですけど、若気の至りでした。後悔しています」と神妙な顔つきで告白していたら、また反応は違っていたかもしれない。これなら「男のためならしょうがない」「男が悪い」で容認でき、被害者同盟として「かわいそうにねえ」と同情さえ喚起します。

現実に彼女は自分の意思で入れていて、まるっきり後悔もしておらず、これからも入れる気満々です。それが癪に触ったのではないか。自分の意思で枠を出て自由に生きている女は目障りなのです。

タトゥは自分自身で見て満足するということもありましょうが、誰かに見せるものでもあり、少なくともセックスをする時、銭湯や温泉に行く時は誰かには見られるものです。ヤクザもんの男の影響で入れたのであればその男に見せるだけで、その男が悪いわけですけど、銭湯で誰かれかまわず見せていて、反省もせず、後悔もしないような女はあばずれの極みです。

※近くで見ないとわからないですが、右側はレースのタトゥです。竹藪かと思いました。

 

 

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