松沢呉一のビバノン・ライフ

健康パスをめぐるフランスやギリシアのプロテスト—コロナ気分からワクチン気分へ[9]-(松沢呉一)

他地域と明らかに違う高円寺の異常なマスク率–コロナ気分からワクチン気分へ[8]」の続きです。

 

 

フランスの反・ワクチン政策プロテスト

 

vivanon_sentence月曜日はエストニア人だけじゃなく、フランス人とも話したのですが、彼は母国のことに興味がないみたいで、フランスではワクチンをめぐって揉めに揉めているという話も知らずにいたので教えたった。

フランスはよくプロテストで荒れていて、いつものことではあるのですけど、先週は平日でも万を越える人がプロテストに参加、週末はフランス全土で11万人以上がプロテストに参加しています(内務省の数字なので、実数はもっと多いかも)。大多数は平和的でしたが、規模が大きく、同様の政策を打ち出したギリシアでも反対運動が起きています。

以下はパリの平日。

 

 

生物兵器説と研究所からのリーク説を区別できずにどちらも陰謀論とし、ウイルス自体が存在しないとする反マスク派も、マスクをするもしないも個人が決定すればいいとする反・マスク義務化もまとめて陰謀論とする「陰謀論バカ」は、これも陰謀論で片付けて終わるのでしょうけど、陰謀論者だけで10万人以上も集まらんて。

フランスの報道も、これを陰謀論で片付けるようなマヌケなことはしてません。デモには極右政党やイエローベストが参加していることに触れているメディアが多いですが、パリだけでいくつものデモが行われていて、極右も極左も参加しつつ、プロテストの内容を反映して医療関係者、介護関係者、飲食店の経営者たちも参加していました。

メディアもこれを軽んじることができないのは、さらに反対が拡大する可能性もあるためです。

 

 

健康パスで実質のワクチン強制に

 

vivanon_sentence現在フランスで反対しているポイントは、先週マクロン大統領が発表した介護・保健・医療関係者のワクチン義務化の拡大と健康パスの延長・拡大です。ギリシアも同じ。

日本でもワクチンパスポートの動きがあり、反対している人たちもいますが、現状の日本でワクチンパスポートを活用しようとしても知れています。もしある店が「ワクチン接種者しか入れない」とすると、客が激減して潰れますから、限定的活用しかできないでしょう。せいぜいのところ、パスを出すと、税金分割り引くなど、ワクチン接種した人がいくらか有利になるようなサービスくらいじゃなかろうか。

しかし、フランスではすでに国民の半数以上が少なくとも一回はワクチンを接種しています。パスは遊園地やスポーツ競技場などの大人数を収容する娯楽施設にすでに適用されていて、7月12日から映画館、劇場、コンサート会場に拡大され、来月からは飲食店にまで拡大し、条件を満たすショッピングセンターにも適用が義務付けられます。

違反者には高額な罰金が課せられるため、飲食店の経営者たちからも反対の声が出ています。

 

 

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