松沢呉一のビバノン・ライフ

疑問の余地がない中国国営テレビの差別表現—Die Antwoordのブラックフェイスと中国のブラックフェイス[下]-(松沢呉一)

今も答えが出せない差別表現の難問—Die Antwoordのブラックフェイスと中国のブラックフェイス[上]」の続きです。

 

 

 

南アで襲われた中国系企業

 

vivanon_sentence南アの暴動は鎮静化しましたが、暴徒によって殺された人、放火によって焼死した人、警察や軍によって殺された人を合わせると300人以上になり、なお増え続けています(死者自体が増え続けているのでなく、焼跡などから死亡者が発見され続けているため)。

今回もまた数字をごまかしていると国内でも批判が出ている中国の洪水による死亡者も増え続けてはいても、100人には達していないので、南アの方が数倍死んでます。なお、中国では、死者の名前までをピックアップして、正確な数字を出そうという試みが始まりましたが、政府発表の数字を超えると消されそう。

 

 

 

 

 

南アでは新型コロナで多数死んでいて、「それに比べればたいして死んでないからOK」とはいかないわけで、国家や国民に与えるダメージは甚大。店舗や倉庫が略奪されたためと、道路が封鎖されたために、暴動エリアでは現在食料不足が起きています。

日本では騒動が治まったところで報道がほとんど消えてますが、国外メディアでは「なぜこんなことになったのか」の検証が続いています。これが大事。

直接のきっかけはズマ前大統領が収監されたことにあるわけですが、その背景にはロックダウンによる失業者の増大、経済の停滞があって、そのストレスと不公平に対する不満が一気に爆発したってことでしょう。

これに関する記事をさまざま読んでいてわかったことがあります。以前から繰り返されてきた略奪の被害として中国系店舗がクローズアップされることはあまりないにもかかわらず、中国メディアは中国だけが狙われているかのような報道をしていることを前に指摘しました。

現実には多数の中国系の店舗が南アにはあるのですが、中国系ショッピングセンターは警備会社に依頼しているため、被害が大きくならないようです。対して小規模なアフリカ内の移民や南アジアからの移民による店舗が襲われやすいのです。

中国系ショッピングセンターや工場が警備を厳重にするのはそれだけの金があるとともに中国系が狙われることを知ってのことでしょう。今回も南アの警備員が守って、中国人は安全な家に待機していたらしい。

しかし、今回はセキュリティを暴徒が上回ってしまい、中国系ショッピングセンターや工場、住宅までが多数被害に遭った模様です。

 

 

中国人の人権侵害が中国人の人権を損なった

 

vivanon_sentenceRFA(ラジオ・フリー・アジア)がその辺のことをまとめていて、中国人社会学者は南アの人々の反中国感情が表れたと分析しています。援助とともに人権侵害、賄賂、環境破壊といった中国の悪習までが輸出されているのだと。

また、巨大プロジェクトの強行によって地元住民との軋轢が生じていること、新型コロナの蔓延は中国の隠蔽に起因することなども原因として上げています。

検索しても、中国共産党の大物と同姓同名のこの陸昊という社会学者の身元がわからないのですが、国内の研究者であれば中国共産党批判はできないでしょうから、台湾の学者か、在米の学者か。あるいは名前は偽名か。

米国政府系メディアの、身元不明の学者の発言ですが、私もこれに同意します。

さらに補足すると、昨年の、広州におけるナイジェリア人に対する差別も反中国感情を加速させていましょう。南アとナイジェリアの関係が微妙であれ、同じアフリカ人として他人ごとではなく、日頃中国人の差別感情を実感している人々は「やっぱり」ということだったかと想像します。

※2021年7月15日付「RFA」中国語(簡体字)版より

 

 

擁護する余地が微塵もない中国のブラックフェイス

 

vivanon_sentence「中国人はアフリカで何をしているのか」とともに、「中国人はアフリカの人々にどういう感情を抱いているのか」についてここ数日調べていたのですが、慄然とします。多くの中国人は「未開のアフリカ人たちを文明化してやった。感謝しろ」と思っていることを隠しもしないのです。

以下をご覧ください。

 

 

 

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