松沢呉一のビバノン・ライフ

男と女はどっちも下品—男と女の違い[3]-[ビバノン循環湯 588]-(松沢呉一)

恋愛やセックスに承認欲求が混じる—男と女の違い[2]」の続きです。念のために今回も書いておきますが、あくまでこれは傾向の話であり、具体例を出しているように、ここから外れる人たちも多数います。

 

 

 

男と女の「モテたい」の違い

 

vivanon_sentence男の「モテたい」と女の「モテたい」は重なりつつも、ちょっと中身が違う。男性の「モテたい」は「自分が魅力的と思える女といっぱいセックスがしたい」という意味合いが強く、女性の「モテたい」は「いい男にいっぱい言い寄られたい」という意味合いが強い。

男はセックスしたいと思わない相手、自分は好意を持っていない相手に言い寄られても、あんまり嬉しくないと感じるのが多いかと思う。人によっては「うぜえ」とさえ思う。私はそう。好きなタイプに言い寄られて初めてモテた実感がある。

対して、女はセックスをしたいかどうかと無関係に、価値ある男に言い寄られれば嬉しい。その言い寄られ方も、情熱的であればあるほどいい。 もともと好きなタイプじゃなくても、自分をより高く評価してくれる相手を好きになったりもする。男は「しつこくされたから好きになる」ってことはあんまりなくて(たぶん)、ここが決定的に違う。

「モテる男はいよいよモテる」という法則があって、遊び人は女にモテる。多数の女性を相手にしてきた男に選ばれることが嬉しいからだ。これも自己評価につながる。

強く求められている状態が幸せなのだから、「試し行動」もする。いつセックスしていいと思っていても、相手の思いを試すために、すぐにはOKを出さない。つきあい始めても試す。他の男に言い寄られたことをほのめかし、嫉妬する様子を見て満足する。

これをやるためのダシに使われることがあって、二番手、三番手でもいいと思っている私でも、やられるとむかつくんである。デートの約束をしていたのに、直前になって「彼氏にバレて怒られちゃったから、デートはまた今度ね」とメールが入る。言わなきゃわからないのに、ほのめかして怒られたいみたい。そこで彼氏が嫉妬を露にしてくれると幸せ。「私のことをそんなに心配してくれたのね、抱いて」ってことになって二人は幸せだが、時間をあけていた私はどうなる。

追記:これを読んで思い出しましたが、別文脈で、「モテる」という状態はどういう状態かを人に聞きまくったことがあります。「自分がまったく興味のない相手に言いよられてもモテたと感じるかどうか」「何人から言い寄られたらモテると思えるか」「セックス抜きでもモテたと思えるか」といった内容。どういう結論か忘れましたが、たぶんこれもメルマガに書いたはずで、この時の結果がここに反映されていそうです。

 

 

男も女も下品だが、質が違う

 

vivanon_sentenceつきあっているパートナーを自慢する場合も男女では微妙に違っていて、多くの男は「どんな魅力的な女性とつきあっているのか」「どんな色っぽい女とセックスしたか」を同性に対していばりたい。「彼女はスタイルが抜群で、おっぱいはロケットみたいだぜ。裸になると、どんだけエロいか」と。そこまで露骨なことを言う人はそうはいないけれど。

女は「どんだけ自分が彼氏に愛されているのか」を同性にいばりたい。「彼氏ったら、仕事で徹夜だったのに、誕生日の花束とプレゼントをもってきてくれたんだよ」と。

この時に、女たちも、その彼氏がいかに魅力的かを言いたがったりもするが、会社を経営しているだの、金をもっているだの、有名人だのといった生々しい話になったりする。人としての評価より、社会的評価である。 「そういう男に尽くされている私は幸せ」さらには「そういう男に尽くされている私ってすごい」と言いたい。

しかも、それをSNSで恥ずかしげもなく晒すのがいて、私は「下品きわまりないなあ」と思うが、女たちから見ると、「おっぱいがボインボイン」と言っている男たちが下品に見えるみたい。たしかに下品だが、「彼氏は一流企業に勤めていて」「バッグも買ってくれて」と自慢するのも同じくらい下品。

どちらが正しいってことではなく、男と女はこうも違うって話。

男の多くは、相手が金のためであっても、自分の好きなタイプとセックスできれば幸せ。そりゃあ、相手が好いてくれていた方がいいに決まっているにしても。だから、性風俗店が成立する。

対して、女性の多くは、相手が金のためにセックスをしてくれたとしても、満足度は低い。だから、女性向けの性風俗はマーケットが小さい。

 

 

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