松沢呉一のビバノン・ライフ

なぜ女の被害者がクローズアップされるのか—国際ロマンス詐欺における被害者の男女比[4]-(松沢呉一)

オーストラリアのデータでは男女差はほとんどない—国際ロマンス詐欺における被害者の男女比[3]」の続きです。

 

 

 

表面化する被害者は女性

 

vivanon_sentence前回見たACCCの結果を踏まえて、オーストラリアの報道をチェックしてみたら、データ上の男女差と違って、圧倒的に女性被害者に重きがあります。具体的に出てくる被害者は女性なのです。

面倒なので数字までは出していないですが、数字まで出せばはっきり偏りが出るはずです。

ACCCのデータは必ずしも犯罪化していない段階での報告が含まれており、これに対して被害届を出す人々は女性率が高い可能性が高く、そこから捜査をして逮捕に至った場合、女性被害者がクローズアップされるのは無理ないのですけど、男女がいた場合、女性被害者をメディアは取り上げる傾向がありそうです。

男性被害者より女性被害者を出した方が「かわいそう度」が高まり、アクセスが増えるためかもしれないし、そもそも記者が「女子供バイアス」で選択しているからかもしれない。また、男は自分の恥と考えて取材に協力的ではなく、女は協力的という被害者側の姿勢の違いもありそうです。

例えば同じ40代の独身男性と独身女性の被害者がいて、同じく結婚費用として貯めていた金を全部持っていかれたとして、記事にする場合、どちらを選択するのか。これは「どちらの方が読者が食いつくか」で決定されて、「きれいに忘れるよ」と男が語るより、「忘れられない」と女が泣いた記事の方が受けると判断する記者の方が多いだろうと思います。

どっちも「バカじゃなかろか」と思いつつ、私もアクセスを考えてそうするかもな。

※2019年1月11日付「abcNEWS au」 国際ロマンス詐欺のうまみは捕まるリスクが限りなく低い事にありますが、これはオーストラリアで逮捕されたケースで、国内での犯行。国際ロマンス詐欺を国内でやるマヌケ犯です。金の受け渡しで、代理人として被害者とも会ってます。いよいよマヌケだと思ったのですが、「犯人は決してあなたに会いません」といった注意をしていることが多いため、会える詐欺師は信用されやすい傾向がありそうです。「相手を信じたい」という人が騙されるわけで、信じられる要因があればそこに食いつきます。現にこの被害者は20万オーストラリアドル(約1,700万円)もの金を渡しています。捕まるリスクがありつつ、成功する率が高いのだろうと思われます。この記事で被害者として出ているのは32歳の女性。

 

 

男の「被害」告白記事

 

vivanon_sentenceそんな中で、男が狙われた記事もあります。

以下。

 

2017年3月2日付「abcNEWS au

 

 

古いですが、最近のものはなかなか見つからんのです。

オーストラリア男性が、出会い系サイトで知り合った、自称32歳のロシア人、アレクサンドラとの3ヶ月にわたるやりとりを公開したものです。

 

 

next_vivanon

(残り 1823文字/全文: 3057文字)

ユーザー登録と購読手続が完了するとお読みいただけます。

ウェブマガジンのご案内

会員の方は、ログインしてください。

« 次の記事
前の記事 »

ページ先頭へ