松沢呉一のビバノン・ライフ

被害者は女性が多いという見方は相当に怪しい—国際ロマンス詐欺における被害者の男女比[2]-(松沢呉一)

ボッタクリとの比較—国際ロマンス詐欺における被害者の男女比[1]」の続きです。

 

そもそも「国際ロマンス詐欺」の被害者は警戒心がなさすぎる

 

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私に接近してきたキム・カストロちゃんはあの1回のメッセージで諦めたようです。詐欺グループも効率の悪いことはしないので、返事がなければそれまでだわね。

つまりはあんなに無愛想で、不躾なメッセージでも、数出せば返事をする人がいて、おそらく何百人か何千人かに1人は金まで出すわけです。「バカじゃなかろか」と思う気持ちを止められない。

キム・カストロちゃんはそうでもなかったですが、時々、Facebookですげえ好みの男の子や女の子から友達申請があります。でも、「若い美形がどうして見ず知らずの薄汚い私に友だち申請をすることがあろうか」と冷静に考えて、すべて無視です。汚れの老け専かもしれない可能性を頭のなかで打ち消しつつ。

これで思い出したんですけど、米軍の美形女兵士からも時々友達申請がありますわ。てっきり自動で友達申請するアプリを使っているんだと思っていたのですが、詐欺が混じっている、あるいは全員詐欺でしょう。

こういった申請に限らず、私は見ず知らずの人からの友達申請はすべて無視しています。詐欺を警戒してのことではないのですけど、知らない人からの申請にウハウハ食いつく時点で警戒心がなさすぎでは?

詐欺師に払う金があるなら、エチオピアの難民に寄付するか、「ビバノン」を購読した方がいいのにと思う気持ちも止められない。「ビバノン」を読んでおけばまず騙されないですから、安全対策としては安い上に、チンコの皮を包茎に戻すことの効果とか、ナチスの強制収容所でも髪の毛を伸ばすことができたとか、風俗嬢はフェラチオで唾を出し過ぎない方がいいとか、いらんことをいっぱい学べます。

一般に犯罪の被害者を笑ったりバカにしてはいけないとわかってますけど、それは被害申告をしにくくし、犯罪が潜在化してしまうからです。この場合は被害届けを出してもどうせ犯人が捕まらない可能性が高いですから、被害届けを出しやすくする工夫はあまり意味がないのですが、被害者が名乗り出ることによって注意を喚起することはできます。

しかし、「国際ロマンス詐欺の被害者は女性」という思い込みに満ちた報道では、正しい警告になりません。

ボッタクリの被害者は圧倒的に男であるのに対して、「国際ロマンス詐欺の被害は女性」となると、急に同情する人々を生み出しますが、これは「女子供バイアス」による「サイレント・エピデミック」であり、現実とずれます。これによっていよいよ男の被害者が名乗りにくくなりますし、「日本の女は無警戒で無思慮」というイメージを作り出します。端的に言えば「日本の女はバカ」ってことです。このイメージが流布すると、現実に詐欺グループは女を積極的に狙う可能性も出てきましょう。

このことを以下、確認していきます。

※2021年5月25日付「Bangkok Post」 タイでの比較的最近の逮捕事例。逮捕されたのはナイジェリア人の男女6名でさらに容疑者がいるとあります。「国際ロマンス詐欺」のグループは、男女混合が多いことが特徴かと思います。力仕事がないので、女だけのグループもあるかもしれない。ネット詐欺はナイジェリアが盛んで、これが、ナイジェリアの若いヤツらがiPhoneを持っているだけで犯罪者だと見なされる背景にあるわけです。かといってすべてがナイジェリア人ではないですから、「武漢肺炎という言葉は差別を助長する」と文句をつけていた人たちは、「ナイジェリア差別につながる」として「ナイジェリア詐欺」という言葉にも文句をつけた方がいいんじゃないですかね。このグループによる被害は2億バーツ(約7億円)ですってよ。被害の実例は女性しか出ていないですが、容疑者たちは犯行を否認しているとあるので、被害届を出した人の証言でしょう。これでは被害者の男女比はわからん。

 

 

「国際ロマンス詐欺は女性をターゲットにしている」なんて事実はなさそう

 

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検索していただけるとわかりますが、日本国内の多くの記事が「国際ロマンス詐欺の被害は女性が中心」という印象をばらまいています。

 

 

2021年4月9日付「INTERNET Watch

 国際ロマンス詐欺とは、SNSなどのやり取りで相手を信用させて、その後いろいろな口実でお金を振り込ませる手口です。一般的に女性をターゲットとしており、外国人がコンタクトを取ってきます。

 今回の被害者は若い方でしたが、FTCによると、被害件数が多いのは40~69歳で、金額が大きいのは70歳以上の方だそうです。男性相手の国際ロマンス詐欺も報告されており、もはや全ての人が知っておくべき情報と言って良いでしょう。ぜひ、ネット詐欺の被害を抑えるために、情報拡散のご協力をお願いします。

 

 

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