河南省の洪水死亡者が3倍に増えた不思議と中国で洪水が連発する原因—脳内地図を修正する試み[6]-(松沢呉一)
「アフリカ人が嫌いな中国人たち—脳内地図を修正する試み[5]」の続きです。
河南省の洪水死亡者が一日にして3倍に
河南省鄭州市でのドイツDWの記者に対する取材妨害は、国際ジャーナリスト連盟(IFJ)も声明を出し、米国務省も中国を非難。
中国の報道官は、それらにまるで耳を貸さず、いつものごとくフェイクニュースだと内容のない定番の決めつけを繰り返すだけでしたが、中国政府は昨日(8月2日)になって急に死者数を3倍にしてきました。河南省全体で死者302名、行方不明50名、うち鄭州市で死者292名、行方不明47名。
鄭州市のトンネルでの死者は6名ですから、まだごまかしている可能性が高く、これでもなお批判が止まらなかったら、さらに増やしていって実数に少しずつ近づける算段でしょう。調査委員会の設置も発表していて、おそらくここが数字の調整をやることになりそうです。
もしかすると、政府は本当に数字がわかっていないのかもしれない。上から下までごまかす癖がついていて、それぞれに自分の責任になることを避けて数字を減らし、その積み重ねで数十分の一になってしまっているのではなかろうか。
この体質は以前から一貫していて(たとえばHIVについての数字のごまかしと利用を参照のこと)、ウイグルについても、新型コロナの発生についても、その感染者や死亡者、ワクチンの効果についても、同様のごまかしをほとんどつねにやっていると思った方がいいし、中国政府の言い分そのままに日本で「陰謀論だ」「フェイクニュースだ」との決めつけをやっているリテラシーなき人々は信用しないようにしたいものです。
※2012年8月2日付「第一財経」 中国国内メディアではこの記事が詳しい。この中に、鄭州市は広く、人口が多いために救出作業が難航したとあって、数字が少なかったのはそのためだと言い訳してきそうです。
グリーンピースの警告通りになっている
その鄭州市では新型コロナの感染者が拡大していることも報告されていて、ちょっと手がつけられない状態じゃないでしょうか。
これを追うように、広東省広州市でも7月30日に地下鉄の駅に浸水。日本国内でも報じられていますが、以下の映像で外の様子までよくわかります。
鄭州市に比べると雨量は少なく、地下鉄構内が川のようになるのは排水設備が十分ではないことを示していましょう。
これ以外にも7月には北京、上海も豪雨に襲われて被害が出ています。
台風も少しは関係していましょうが、都市部については、おそらく東京のゲリラ豪雨の強大なものだと推測しています。
これについてはグリーンピースが7月14日に発表した報告書「危険気候城市報告」が参考になります。
中国語のPDFであり、専門的な内容なので私はブリーフィングしか読んでないですけど、中国の都市部では急速に気温が上昇しており、危機的な状況にあると警告する内容です。この原因は主に人口の集中によってCO2の排出量が増えていることにあるようですが、政府の無策によるところも大きいのだろうと想像できます。すなわち人災。
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