松沢呉一のビバノン・ライフ

洪水の頻発が意味する人口の集中・土地の喪失・食料不足—フレッド・グテル著『人類が絶滅する6のシナリオ』より[2]-(松沢呉一)

なぜ私の顔ではヘルペスが頻発し、地球では山火事が頻発しているのか—フレッド・グテル著『人類が絶滅する6のシナリオ』より[1]」の続きです。まだ少しは地球と人類に希望があるのかもよ—IPCC(国連気候変動に関する政府間パネル)の「第6次評価報告書」」も併せてお読みください。

 

 

洪水の増加と規模の巨大化はここ数年のこと

 

vivanon_sentenceフレッド・グテル著『人類が絶滅する6のシナリオ』の原著『The Fate of the Species: Why the Human Race May Cause Its Own Extinction and How We Can Stop It 』は2012年に出ていて、邦訳は翌年出ています。執筆したのは2011年だとするとちょうど10年。

山火事についての記述はありますが、ここ数年世界で頻発しているような大規模な洪水についてはほとんど出てこなかったと思います。ほんの10年の間にも事態は深刻化し、これだけの洪水の頻発は予想できていなかったかもしれない。

山火事同様、洪水増加の理由も複雑でしょうけど、「河南省の洪水死亡者が3倍に増えた不思議と中国で洪水が連発する原因—脳内地図を修正する試み[6]」に書いたような都市化と人口集中に伴う洪水とともに、広くは気温の上昇によって蒸発する水が増え、かつ森林や緑地の減少による治水能力低下によるものも多いでしょう。

これらが予想以上のペースで進行していて、意識して報道を見ていると、ほとんど毎週、アジアで、あるいはアフリカで洪水が起きてます。

対して『人類が絶滅する6のシナリオ』での水についての記述は以前よく言われていたように海面の上昇についての記述がメインです。どこそこの島は消えるだの、オランダは沈むだの。

この危機は今も去ったわけではなく、これから本格化するわけですが、洪水や山火事のような「目に見える危機」「今そこにある危機」に比べると「見えにくい危機」「長閑な危機」なので、一時期ほどは取り上げられることがなくなっているのだろうと想像しています。

※2021年8月4日付「The Arizona State University NEWS」より「Satellite Data Reveals Increasing Proportion of Population Exposed to Floods Worldwide」 アリゾナ大の研究者チームが「ネイチャー」誌に発表した論文の概要説明。「河南省の洪水死亡者が3倍に増えた不思議と中国で洪水が連発する原因—脳内地図を修正する試み[6]」で取り上げたグリーンピースの報告書は中国限定でしたが、その世界版みたいなもので、こちらは衛星写真を使って2000年以降の人口増加を調べ、人口の急増と洪水との関係を明らかにしたもの。その90パーセントは中国とインドで起きているとのことです。

 

 

海に沈みゆくナイジェリアのラゴス

 

vivanon_sentenceよくよく報道を見ていると、土地が海に消える危機もすぐそこに迫っていて、とくに海抜の低い場所では洪水が頻発しています。

ナイジェリアのラゴスはこれまでも繰り返し洪水被害に遭っていますが、とくに今年は大規模な洪水が複数回起きています。ナイジェリアのチャンネルTVは埋め込みができないので、動画はやめておきますが、映像を見ると、すぐに川が溢れてしまうため、雨水を排水することができない様子がよくわかります。

濁流が家や車を流していく、といったタイプの洪水ではないのですが、度重なる洪水のために家に住めなくなった「洪水難民」も発生。

雨季はこれからですので、洪水もこれから深刻化。ラゴスには農地もあって、作物によっては被害を受けているでしょう。

いずれラゴスは海に沈むことになるので、現在建設が進んでいる富裕層向け埋め立て地は土地を嵩上げした上に護岸壁で守られるとのこと。貧乏人が土地を失っていく中、金持ちは生き残る。ナイジェリア詐欺で儲けている連中は都市部にいる必要がないので、もっと安全なところにいるんじゃないですかね。

ナイジェリアの人口は2億人、ラゴスの人口は2,400万人。人口が多過ぎる上に、ラゴスに人が集中しすぎです。それが洪水を招く。東京も相当危うい。海抜の低い東側だけでなく、一昨年は多摩川が決壊しましたしね。

※2021年8月10日付「CNN NEWS」 富裕層向け埋立地の話はここに出てました。写真も掲載されています。

 

 

next_vivanon

(残り 1683文字/全文: 3515文字)

ユーザー登録と購読手続が完了するとお読みいただけます。

ウェブマガジンのご案内

« 次の記事
前の記事 »

ページ先頭へ