松沢呉一のビバノン・ライフ

エコファシストによる人口削減計画—フレッド・グテル著『人類が絶滅する6のシナリオ』より[7]-(松沢呉一)

「地球における適正人口を50億人以上超過してからできることには限りがある—フレッド・グテル著『人類が絶滅する6のシナリオ』より[6]」の続きです。「まだ少しは地球と人類に希望があるのかもよ—IPCC(国連気候変動に関する政府間パネル)の「第6次評価報告書」」と「地中海沿岸・カリフォルニア・シベリアの森林が今も燃えている—フレッド・グテル著『人類が絶滅する6のシナリオ』より[付録]」も併せてお読みください。

 

 

人類が生き延びるには人類の大量殺戮

 

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前回は、フレッド・グテル著『人類が絶滅する6のシナリオ』では、明示されていないながらも気づく人は気づくようになっている「人類が生き残る方法」を説明しました。 人が減ればいい。

ここで思い出すことがあります。2019年、ニュージーランドでモスクを襲撃して51人を射殺した犯人も、米テキサス州エルパソのウォルマートで23人を射殺した犯人もエコファシズム支持者だったことです。彼らの主張を読んだわけではないので、彼らが何を考えていたのかわからないですが、エコファシズムがこのような行動を促進することは理解しやすい。人類が滅亡から逃れるためには人口を減らす必要があると考える。減らないなら減らせばいいのです。

人類が絶滅する6のシナリオ』が地球温暖化による人類破滅と、バイオテロによる人類破滅を併置させたことによって、私自身、「そっか、これを合体させればいいのか」と気づいたように、ここに気づく人は決して少なくないはずです。あれらの犯人や私ごときでは、気づいたところでウイルスを作ることは難しいですけど、もしもっと賢ければ大量に人が死ぬウイルスを作ってばらまく。20億人ほど死ねば、さらに理想を言えば50億人ほど死ねば、もしかすると人類は滅亡しない。自分自身も死ぬかもしれないけれど、人類のための捨て石です。

バイオテロは銃を乱射するよりはるかに精神的に楽だと思います。目の前で人が血を流して死んでいくわけではなく、新型コロナで死亡者の数を見たって、一人一人の死まではリアルに感じない。直接殺されるところを見るわけではなかったヒトラーを筆頭とするナチス高官たちがユダヤ人の死を数字だけでとらえたのと同じです。

もし私が大金持ちだったら、島を買います。熱帯ではなく、いくぶん寒いくらいの場所がいいでしょう。そこに信頼できる人たちだけを内密に30人くらい招待し、外からの人を入れないように警備員を雇い、数年分の食料や燃料を買い込んだ上で、農地も作ります。自家発電もできます。

しかるのちに、金で科学者に作らせたウイルスをばらまいて、人類が激減するのを待ちます。生き延びた製薬会社がワクチンを開発したことがわかって、そろそろ島を出るかと思ったところで渡り鳥がやってきて、糞でウイルスをばらまいて、島民全員死にましたとさ。

※Paul R.Ehrlich『The population bomb』 前回登場したスタンフォード大学のポール・R・エーリック教授の著書。これに限らず、人口や環境に関する本はあんまり邦訳が出ていない。書店に行けばそれなりには目につきますが、もっと英米では出ているってことです。基本になるこういった本だけでも邦訳を出した方がいいと思いますけど、売れないのだろうと思います。

 

 

あるいは「暴走するコンピュータ」の章を参照してもいい

 

vivanon_sentence山火事の報道を読んでいて気づいたのですが、本年6月27日から3日連続でカナダのリットンという村ではカナダ観測史上最高気温を記録し、29日には49.4度を記録。その2日後に山火事が発生し、村のほとんどを消失。わずか15分で火が村全体に及んだため、住民は着の身着のままで脱出。

リットンはブリティッシュコロンビア州にあり、バンクーバーにも近く、バンクーバーも熱波に襲われ、69名が熱中症で死亡。もともと夏は過ごしやすいはずの地域にもかかわらず、各地で45度超えを記録していて、エアコンがない家が多いため、バンクーバー市ではエアコンで涼むことができるスポットを設置したそうです。

しかし、都市型の高温は夜も気温があまり落ちないため、夜中でも自宅で死にかねない。

カナダがこんな状態ですから、もはや地球上、逃げる場所はなさそうです。南極やグリーンランドは過ごしやすくなるかもしれない。

ロイターがこんな映像を出しています。

 

 

発電所も焼けたようです。この村だけの小規模な発電所でしょうから、一ヶ月もあれば発電所や送電線を含めて修復可能かと思うのですが、大規模な発電所で発電炉が破壊されると、少なくとも1年、おそらくは数年かかるんですっすてね。これもフレッド・グテル著『人類が絶滅する6のシナリオ』に出てました。

 

 

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