地球再生のための壮大なアポトーシス(とOfficial髭男dismの新曲)—フレッド・グテル著『人類が絶滅する6のシナリオ』より[10](最終回)-(松沢呉一)
「成層圏注入に対する期待と反発—フレッド・グテル著『人類が絶滅する6のシナリオ』より[9]」の続きです。「まだ少しは地球と人類に希望があるのかもよ—IPCC(国連気候変動に関する政府間パネル)の「第6次評価報告書」」と「地中海沿岸・カリフォルニア・シベリアの森林が今も燃えている—フレッド・グテル著『人類が絶滅する6のシナリオ』より[付録]」も併せてお読みください。
注:本文に書いているように、アポトーシスは個々の細胞に組み込まれた自死のプログラムであって、タイトルにあるアポトーシスはあくまで比喩であり、 種全体の自滅が人間の遺伝子にプログラムされているわけではありません。
グリーンランドでもっとも高いところに建つ観測所が雨を観測
私の20年から30年になる環境問題についてのブランクを穴埋めする本シリーズもこれが最終回です。
このシリーズは断片的に読むと、「ヘルペスウイルスが人類を救う」「人がいっぱい死ねばいい」「コロナ禍で地球の温暖化が鈍った」など、誤解されそうな記述があちこちらあるので、最初から通して読むことをオススメします。
最後に相応しく、こんなニュース。
2021年8月19日付「NBCニユース」
日本語メディアでも報道されてますが、こちらの方が詳しい。NASAも報じてますが、詳しすぎてよくわからん。
先週、海抜3千メートル以上のグリーンランドでもっとも高い氷床に上に建つ観測所で、観測史上初めて降雨が観測されました。つまりは気温が0度以上になったわけです。0度以上になったのはこれが3回目だそうですが、雨は初めて。このため、急速に氷河が溶けていて、その上に建っている観測所ですから、移転を計画中とのことです。
この記事にあるように、北極圏の氷が溶けると、アムステルダムはもちろんのこと、ニューヨークや上海も水没します。江戸川区も水没するかもしれない。
武田邦彦が吹聴した「北極圏の氷が溶けても海面は上昇しない」というデタラメを信じている人は訂正しましょう。武田邦彦は小学生レベルの地理を勉強し直した方がいいです。
地球再生のために撤退する
そもそも私はそんなに長くこの世にいないですから、50年後のこと、30年後のことを考えても無駄。1年後のことさえ危うい。ということもあって、どうしても真剣さが薄くなります。
それでもこのシリーズをやって、改めて「人類が滅亡するのはイヤだなあ」と思いました。「人類の最期を見届けるのは悪くない」とも思ってましたが、空から巨大な火の玉が落ちてきて一瞬にして終わるわけではなく、いかにティッピングポイントを超えて急速に環境が変化すると言っても、一人の人間にとってはそれなりの時間がかかります。
そうすっと現在のアフリカやアジアの難民キャンプのような状態に人類のほとんどが直面します。おそらくは何年もの間。場合によっては何十年。
日本は今のところ長閑ですが、これは食糧を買って輸入できるから。今後小麦やトウモロコシの価格が上昇していくと、もはやそう経済的に豊かとは言えない日本はその確保も難しくなり、中国に全部買われて、飼料も買えないと肉の生産も難しくなります。気候変動によって国内の農業も危うくなり、魚も採れなくなったら、食い物の奪い合いになります。
難民収容所ではなく、ナチスの強制収容所を出した方が適切かもしれない。腹が減ると、人間、なんだってします。盗みもするし、暴力も行使する。時には人肉だって食う。
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