松沢呉一のビバノン・ライフ

中国政府が恐れるイスラム過激派によるテロとアフリカでのクーデターや民衆蜂起-(松沢呉一)

 

イスラム武装組織が中国を敵視

 

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最近、中国関係のニュースは、IT産業、ネットでの表現、芸能界、塾などさまざまな分野での締め付けが強まっているために国外からの投資が鈍り、「中国経済に陰り」みたいなものが多いわけですが、ウイグルやチベットでどんな人権侵害が起きていようとも、金儲けのパートナーとして中国を見ている企業人向けのニュースです。中国の人を見ているわけでなく、中国の金を見てきた人たちにとって、人権よりも金儲けができるかどうかだけが大事。

そんな記事が多い中、2021年9月9日付「ニューズウィーク」日本版掲載「新たな超大国・中国が、アメリカに変わるテロ組織の憎悪の標的に」は中国で商売していない私も大いに納得できました。

 

 

 

 

パキスタンのシンド州やバルチスタン州で分離独立を目指す少数民族系の武装勢力は、中国を21世紀の「新植民地主義国」と見なしている。中央政府と組んで自分たちの資源を奪い、今でさえ悲惨な社会・経済状況をさらに悪化させている元凶、それが中国だと考えている。

カラチでの中国人襲撃について名乗りを上げたバルチスタン解放戦線は犯行声明で、「中国は開発の名の下にパキスタンと結託し、われらの資源を奪い、われらを抹殺しようとしている」と糾弾した。

 

ジハード(聖戦)の旗を掲げるイスラム過激派は従来、アメリカと西欧諸国を主たる敵対勢力と見なしてきた。中国の存在は、あまり気にしていなかった。しかし新疆ウイグル自治区におけるウイグル人(基本的にイスラム教徒だ)に対する迫害が伝えられるにつれ、彼らの論調にも中国非難が増え始めた。

そうした論客の代表格が、例えばミャンマー系のイスラム法学者アブザル・アルブルミだ。

激烈にして巧みな説教者として知られるアルブルミは15年以降、米軍のアフガニスタン撤退後には中国が新たな植民地主義勢力として台頭すると警告してきた。支持者向けのある声明では「イスラム戦士よ、次なる敵は中国だ。あの国は日々、イスラム教徒と戦うための武器を開発している」と主張していた。

別のビデオでも、「アフガニスタンではタリバンが勝利した……次なる標的は中国になる」と言い放っている。

 

この記事は親中国のパキスタンで、反政府のイスラム武力勢力が中国をターゲットにしつつあり、アフガニスタンでもそうなるのではないかとの見込みを論じたもの。中国にとって悩ましいのはウイグルです。今のところタリバンはそこには踏み込まない姿勢ですが、何かあれば浮上します。

反政府勢力がパキスタン政府と結託する中国をターゲットにするだけでなく、パキスタンの国民の中にも反中国機運が高まってきていて、中国にもインドにもいい顔をしてきたネパールも同様であることは「ビバノン」でも書いてきた通り。

このふたつの引用文に共通しているのは「中国を新植民地主義国と見なしている」という点です。これは南アジアだけでなく、アフリカ諸国でも同様です。反中国を明確に掲げたものではないにせよ、ギニアのクーデターとそれを支持する国民の背景にも中国に対する反発があるだろうことは説明した通りです。

 

 

アフリカ諸国の対中感情

 

vivanon_sentenceギニアを含めて、どこの国でも中国によって恩恵を受けている人たちは多数います。富裕層だけでなく、病院や道路、鉄道ができて助かっている人たちや、それらの建設や維持によって仕事を得ている人たちもいます。質はともあれ雇用を創りだしています。

 

 

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