天安門事件の追悼をしても新型コロナの実情を報道しても逮捕される国—公開本数3,000本達成[中]-(松沢呉一)
「ドラスティック発足メンバーのインタビューと香港・立場新聞によるドキュメンタリー—公開本数3,000本達成[上]」の続きです。
天安門事件を知らしめるだけで逮捕される国
1989年6月4日、天安門事件。あの時私は怒り狂って、「あんな国、絶対に行くか」と思いました。香港には行ったことがあっても、本土には行ったことがなかったのですが、一生行かなくていい。いかにその政府が全体主義の殺人者集団であっても、いかにその国が嫌いでも、実際に行って自分の目で見ることには意義があるわけで、いささか子どもじみた決意ではありました。
その後、中国は経済発展し、それまでに比べれば国民は自由を享受できるようになった部分もあり、今後民主化は進んでいくだろうとの見方が一般的で、私もそう信じていました。
そこで、10年ちょっと前に北京、上海その他の都市に10日ほどいたんだったかな。「好きか嫌いか」で言えば好きなところもあるし、好きになれないところもありましたが(中国共産党は一貫して嫌い)、疑いなく面白い国でした。
その感想は間違っていなかったとしても、黙っていても民主化されるという読みは、今となっては大きな間違いでした。一貫して中国共産党はナチス同様の全体主義の殺人者集団です。共産党の独裁である限り、今後も変わらない。
前に簡単に書いていますが、1989年の天安門事件以来、ずっと香港で開かれてきた追悼集会が、新型コロナを名目にして、昨年初めて禁止されました。これに続いて今年も禁止されて、主催の「香港市民支援愛国民主運動連合会(支連会)」は集会ではなく、どこにいてもいいので、キャンドルに火を灯すことを呼びかけていたのですが、主催は違法集会を企てたということで逮捕されています。集会じゃないってば。
2021年6月4日付「東京新聞」
東京新聞は積極的に香港や中国の民主化運動とそれを潰す中国共産党の動きを取り上げている印象があります。人権を重んじる立場としては当然です。
この時は、間もなく保釈されているのですが、その後また逮捕され、さらに保釈。
そして、数日前にこんな報道がなされてました。
2021年9月8日付「BBC NEWS JAPAN」
この記事に出ている写真は弁護士で「支連会」の副代表である鄒幸彤さんです。
香港当局は国家安全法の容疑で「支連会」のメンバー4名を再逮捕。天安門事件があったことは中国政府も認めていて、死者が出たことも認めていて、なのに、キャンドルを灯す呼びかけで国家安全法違反。国安法は無期懲役も可能な法律ですから、今度は保釈は認められそうになく、何年もの実刑を食らいそうです。
怒りで震えます。
この翌日。
2021年9月10日付「BBC NEWS JAPAN」
六四記念館も完全解体。これが中国共産党です。
中国で命を賭けて闘い続ける張展さん
この東京新聞の記事もすさまじいです。
2021年9月8日付「東京新聞」
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