松沢呉一のビバノン・ライフ

独アンティファ内ネオナチ襲撃グループの裁判—首謀者と目されるのは女子学生リナ・E-(松沢呉一)

アンティファが銀行襲撃?

 

vivanon_sentence「もうじきドイツは総選挙の投票日だな。その後どうなっているのかな」と思ってドイツの報道を探す過程で、アンティファが銀行や警察を襲撃したという記事が出てました。

「なんだ、なんだ」と思って読んだら、ドイツでは去年の11月、ネオナチ襲撃グループが逮捕され、以降、その解放闘争が続いていて、そのデモでの出来事でした。この件はドイツ以外ではそんなに話題になっていないので、全然気づいてませんでした。

もっと念入りに探せば日本語で書いている人がいるでしょうけど、ざっと見たところ見つからなかったので、まとめておくか。

この事件は集団による傷害事件であり、複数回実行されたことを加味しても、通常だったら最長懲役3年か4年といったところか。殺意があったことが立証されればあと数年増えるでしょうけど、事件内容としては不良グループが敵対勢力を繰り返し襲撃したのと同じ。

そのわりにはドイツでは大事件になっているのは、加害者がアンティファ、被害者がネオナチだからです。

被告ら4名を支援しているグループである「SOLI ANTIFA OST」は、検察の主張の根拠はネオナチの証言を憶測で固めたものでしかなく、アンティファに対する権力の弾圧であると主張しています。まだ裁判は始まったばかりで、検察がどんな証拠を出してくるのかもわからず、場合によっては全員無罪になる可能性もあることを前提に以下をお読みください。

※下に埋め込んだMDR(ザクセンザクセンアンハルト州テューリンゲン州の放送局)のドキュメンタリー「Prozess gegen Lina E.: Wie linksextreme Gewalt eskaliert」より、顔を隠して出廷する被告たち。あるいはマスク代わりか。

 

 

半匿名のリナ・Eという名前がシンボルに

 

vivanon_sentenceこの記事に容疑がまとめられています。

 

2021年5月28日付「mdr

 

4名のアンティファが2018年10月から2020年2月までの5件のネオナチに対する襲撃事件で2020年11月に逮捕されます。

2020年2月の事件では15名〜20名のアンティファがネオナチを襲撃しており、実際には捕まった4人以外にメンバーはいるのでしょうが(10人程度と書かれているものもあります)、被告らはほとんど黙秘している上に、互いに誰か知らない関係で集まったのもいるため、捕捉しきれていないのかもしれない。

この事件が話題になっている要因のひとつはリーダー格が26歳の女子学生ってことです。リナ・E(Lina E.)です。

ドイツでは事件の被害者は匿名。被疑者、容疑者、被告は半匿名で、セカンドネーム+ファーストネームの頭文字だけが出されます。これでも個人の特定はなされ得ますけど、姓は家族、親族まで及ぶのに対して、名前は個人のものです。これは法律ではなく、メディアの自主規制です。

家庭環境や生い立ちについても触れられることはなく、リナ・Eも女子学生ということしかわからず、大学名は公表されていません。教育学を専攻しているとだけ報じられています。写真は出てますが、目は伏せられています。

グループは2018年6月までに結成されたと目されていて、当時23歳ですから、院生かも知れないですが、こういう詮索はドイツでは不要。

 

 

ドイツ当局はテロリスト扱い

 

vivanon_sentence

以上がざっと事件の概要で、MDRのドキュメンタリーがここまでをまとめています。全編ドイツ語でドイツ語字幕ですが、顔を隠して入廷する被告たちや被害者の傷も出てきます。

 

 

 

 

next_vivanon

(残り 2036文字/全文: 3593文字)

ユーザー登録と購読手続が完了するとお読みいただけます。

ウェブマガジンのご案内

« 次の記事
前の記事 »

ページ先頭へ