松沢呉一のビバノン・ライフ

スラムの生活は想像を超えて厳しい—ケニアの物価と貧困層の収入-(松沢呉一)

ケニアでは5歳以下の死亡率は日本の19倍高く、平均寿命は18歳短い—見えにくい現実を見る」の続きです。

 

 

 

リリアンさんのマゴソスクール紹介

 

vivanon_sentence以下は1999年に早川千晶さんとマゴソスクールを創立したリリアン・ワガラさんによる学校の紹介。

 

 

 

 

この映像は2010年のものです。当時の生徒数は300人で、今は500人。入学希望者が多すぎて、比較的経済状況のいい生徒の入学を断っていても10年で生徒が7割増。コロナ禍で親の収入が絶たれて、さらに入学希望者は増えているでしょうが、全員は受け入れられない。受け入れられなかった子どもはどうするかと言えば学校に行かないだけかと思います。

現在、ケニアではプライマリースクール(1年生から8年生)を卒業していないのは10パーセント台しかいないはずなので(下に出したグラフ参照)、とくに都市部で生活するには不利ですが(「学歴がない」+「学校で当然学ぶべきことを学んでない」)、金がないのでしょうがない。

22年前にスタートした時に借りたスラムの一部屋の家賃が1,000ケニアシリング(KShまたはKESと表記)。当時の日本円で2,000円くらい。

ケニアの物価は年々高くなっていて、スラムの広い部屋だと、今は5,000KSh以上しそうです。ケニアシリングの価値も高くなっていて、今は日本円とほとんど同じくらいなので計算がしやすい。5,000KShは5,000円。

経済成長したため、物価は上がっているのに給料はそれに伴っては増えない。貧困層にとっては生活が苦しくなっているのです。

現在、リリアンさんは51歳。1970年か1971年の生まれです。前回出した動画で早川さんはリリアンさんには「兄弟姉妹が18人いる」と言ってました。母ちゃんは与謝野晶子か。与謝野晶子の子どもは11人ですから、ケニア基準ではたいしたことはないですが。

次回までこれらの数字を覚えておいてください。

※リリアンさんが担当する縫製の工房「マゴソファクトリー」。ここの商品は日本でも買えます

 

 

給料は15,000ケニアシリング

 

vivanon_sentenceマゴソスクールのサイトは本当に丁寧に作られています。マゴソスクールを支える会」が支援を受け付けていて、さまざまな支援方法が用意されていますし、何にどれだけかかるかの明細も出ています教員の給料、子どもたちの給食費、保護者のいない子どもたちの生活費など。

教員の給料は15,000KSh。ムチャクチャ安い。これでは生きていくのがやっと。一般の公立小学校の教員の給料を調べたら、新人でもこの4倍程度は出ているようです。こちらのサイトによると、ナイロビでの一人の生活費は、家賃を別にして57,000KShですから、4倍程度でも余裕はない。

マゴソスクールの先生たちは金より志の人たちかと思うのですが、志だけではメシは食えない。おそらくこの数字は数年前のままだと思われます。

しかし、末端の労働者では今もこういう給金は少なくないみたいです。給食のおばちゃんなど、事務の人たちは今もこういう条件じゃなかろうか。なにしろ日雇いだと1日働いて300KShが当たり前です。1ヶ月フルに仕事があっても10,000KShに達しない。

物価が日本の10分の1ならいいですが、ケニアでも都市部は物価が高い。もっとも安い野菜や果物でもせいぜい5分の1から3分の1くらい。

マゴソスクールの見取り図。宿舎がありますが、これは子どもたちの宿舎でしょう。ここに教員や職員が住めるなら、家賃は浮きますが。

 

 

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