ドイツの連立政権の難しさと中国の石炭確保の難しさ—中国の大規模停電は温暖化対策によるものではなさそう-(松沢呉一)
ドイツの総選挙
ドイツの総選挙についてはあちこちで取り上げられているので、「ビバノン」ではスルーでいいだろと思っていたのですが、事前にさんざん触れていたので、結果にも軽く触れておきますか。
上は今回の政党別の得票率で、下は前回の2017年との比較です。
社会民主党(SPD)がトップ。メルケルのドイツキリスト教民主同盟(CDU/上のグラフではUnion)は大きく後退。事前に予想されていた通り、第3位の緑の党(Grüne)と第4位の自由民主党(FDP)と連立政権を組むことになりそうです。しかし、その調整は難しく、数週間はかかると言われており、新政権発足まではメルケル政権が続きます。
今回の選挙は、新型コロナ対策よりも気候変動を争点と考えた有権者が多く、それを反映して緑の党は5.9パーセントの伸びです。一時は「第1位もあり得るか?」と言われていたのに、アンナレーナ・ベアボック党首の経歴詐称などで失墜。それでも大きく躍進するくらいに気候変動への関心が強かったわけです。あんなことがなければもっと伸びたことは間違いない。
前回(2017年)は、極右政党AfDが第3位で、緑の党より支持されていましたが、今回は2.3パーセント支持を落としています。前回が異常だったと見た方がいいのでしょうが、今回も極右政党を1割以上の有権者が選んでいて、緑の党と4.5パーセントしか差がない。おもに移民対策への批判や疑念の反映ですから、今後もこの数字は維持されるのではなかろうか。
連立政権の難しさ
とくにドイツは今年7月の洪水被害が大きかったってことがありますが、ヨーロッパではどこの国でも環境問題が喫緊の争点になっていることが想像できます。陸続きの国であれだけ山火事や洪水が相次いでいて、ここに至ってなお「よその国で起きている自分とは関係のない出来事」ととらえている人がそういるとは思えません。
ドイツでそうとらえているのがもっとも多いのはAfDの支持者でしょう。AfDは「地球温暖化はCO2とは無関係、よってCO2の削減は無意味」という立場をとっています。どこにでもこういう人たちはいますわね。
それ以外の政党はどこも気候変動対策、CO2対策に積極的な支持者が多く、そもそもメルケルも環境問題には積極的でしたから、その点では、キリスト教民主同盟(CDU)も同じです。
しかし、その中身まで検討すると支持の内容は相当に違います。緑の党の支持者では、3人に2人が環境対策によって雇用の減少、つまり失業率が増大することは容認としています。対して、自由民主党(FDP)ではこれが逆転して、3分の1しか容認しない。社民党(SPD)はその中間。
「社民党+緑の党+自民党」を社民党は目指し、国民もこの3党の連立を支持する人がもっとも多いのですが、「社民党+キリスト教民主同盟」は長らく連立を組んでいた関係であり、ここに戻る可能性もあり。社民党を外して「緑の党・自民党・キリスト教民主同盟」も数字的にはあり。
この調整が難しいのですけど、連立を成立させるために、曖昧に「温暖化対策をとれ」ではなく、より踏み込んだ議論が求められる分、ドイツは先を行っています。もちろん、調整しなければならないテーマは、それ以外にも多数ありますし。
※2021年9月27日付「tagesschau」 連立のキャスティングボートを握る緑の党と自由民主党はすでに協議を始めているとの内容。
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