松沢呉一のビバノン・ライフ

この日本で強い為政者の強い姿勢が必要だったのかどうか今一度考える—「コロナ自警団」はファシズムか[6](最終回)-(松沢呉一)

人口比で日本の7倍以上死んでいるドイツを手本にすべきか?—「コロナ自警団」はファシズムか[5]」の続きです。

 

 

 

国と国の比較は単純ではない

 

vivanon_sentence前回取り上げたノルウェーとスウェーデンの比較を見ると、それぞれに歴史的背景や政治制度、国民性などを踏まえた対策をとったことがわかります。

ということを考えても、日本は日本に適したやり方をするしかなくて、私自身、スウェーデン方式が参考になると思いつつ、日本では絶対に無理という結論を早くから出していました

しかし、結果的に似ただけであっても、ロックダウンしなかったという点では、スウェーデンに近いと言えなくもない。私がそう言っていただけでなく、同様の論調の記事も出ています(ここに出したSS参照)。表面的な比較ではありますが。

スウェーデン方式は「ナッジ方式」とも言われています。政府ははっきりとした方針を出すのではなく、国民の方向付けをするだけ(実際には集会の規制などをやっていますけど)。日本は要請としながらも強制性が伴ってましたから、「ナッジ」を越えていて、スウェーデンに比べると強い姿勢だったのだとも言えます。

一方、スウェーデンはゆるい対策を選択した姿勢においては確信的であって、この根拠も明確であり、それを国民に理解させようとしていた点で「強い姿勢であった」と言えますから、どっちがどうなのかは一概には言えないし、強い対策をとった時のリスクも国によって違います。

※2020年12月18日付「THE CONVERSATION」  スウェーデンと日本とを並べて例外的対策をとったとして、どちらも否定的に論じたオーストラリアのメディア。しかし、ここに至って、そのオーストラリアは感染者が増大してゼロリスク対策を放棄しそうです。

 

 

煽り記事は不安を招き、データは人を冷静にする

 

vivanon_sentence法律による強制的対策は一律になることを求めます。対して、要請に対しての反応はバラバラになります。

コロナ禍ではっきり見えた日本人の特性は「周りと同じでいることで安心する」というものです。揃って検査を受けて揃ってマスクをして揃って病院に行って揃ってワクチンを打ちたい。そこに私は気持ち悪さがあるのですが、その特性のおかげで、強制するまでもなかったのは本当によかったと思ってます。

予防効果なんてないとしても、公共の場として屋外でもマスクを義務化すると、全員がする。しかし、日本では、少ない時期は100人中0パーセントから3パーセント程度でしかなかったとは言え、ほとんどの場合、数名はしない人がいました。夏場は熱中症対策としてマスクを外す人が多くて、顎マスクを入れると、5パーセントから20パーセント(20パーセントは高円寺くらいですが)に達してました。東京だからということもあるでしょうが、屋外において、マスクをしたくない人はしない自由が確保されていました。

この点では「日本はいい国」であり続けてホッとしました。店の自粛要請についてはパチンコ屋を筆頭に強制力が働いてしまったのが残念でしたが。その結果、予防対策に金をかけていたにもかかわらず、パチンコ屋はずいぶん潰れましたしね。

しかし、この私が「日本はいい国」なんて言葉を繰り返さなければならないくらいに、「皆と一緒でいたい」という人々の不安は強くて、田野教授と同様に「もっと強く」を政治に求めた人たちも多かったわけですけど、死亡者数・致死率・人口当たりの死亡率のどれを見ても、日本はそんなに悪くない。経済的ダメージも比較的少ない。

「このままじゃ、来週にはニューヨークのようになる」とやらかした根拠なき煽り記事に騙された人が多かっただけなのではないか。そういう時は数字を見て電卓を叩けばいいと言ってきた通りで、煽り記事よりデータの方がずっと役に立ちます。

現実にはワイドショーを筆頭としたメディアに煽られて、自分はどうしたらいいのか迷った人は多かったのでしょう。迷えばいいんです。迷って自分で考えればいい。考えないまま、どこまでもメディアに踊らされた人たちも多いんでしょうけど、不安になった人は根拠なく、強さを求めがちです。すっきりしない状態からすっきりした状態を求める。はみ出す者を叩き、排除する。

※2020年12月18日付「Managed Healthcare EXECUTIVE」 米国と違う対策をとったスウェーデンと日本の研究者による発表をまとめた記事。スウェーデンと日本もそれぞれに違い、社会制度、年齢構成、国民性などを比較しています。ここで注目したのはとくにスウェーデンについて「社会が疲弊していない」という特徴を上げている点です。余力があるため、次の事態にも対応が可能。たしかにスウェーデンはこの記事以降、変異型が出てきても社会は落ち着いていて、数字も落ち着いています。こういう多角的な視点が必要。

 

 

「安部首相待望論」を下支えする論

 

vivanon_sentenceたしかに菅首相は頼りない。しかし、すでに表明しているように、私は菅首相がロックダウンをする法整備の必要がないと突っぱねていることを支持しています。その点だけを切り取ってですけど、菅首相支持。

批判すべき点は批判すればいいとして、姿勢が強いか弱いかで判断すべきではなく、そこを見極めずに、「自民党だから叩いておけ」「政権を叩けば、反権力の俺様のスタンスは維持できる」といった考え方は、ちらほら出ていた「安倍晋三待望論」に接近します。

 

 

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