ハリケーンと山火事だけではない米国の環境危機—北米と地中海沿岸だけでもない-(松沢呉一)
「ハリケーン・アイダの猛威と中国大連市の高層ビル火災—これから人類に起きること」の続きです。
ハリケーン・アイダの影響は今後数ヶ月続く
ハリケーン・アイダは事前の警告が浸透していたため、自主避難した人たちが多かったそうで、死亡者は今のところ5名です。事前準備が大事ってことですが、道路が塞がり、連絡手段が途絶えて孤立したエリアがあって、そこでの救援活動は今も続いています。
映像を見る限り、腰まで水に浸かっていながらも、鉄砲水や土石流で家が土砂に埋もれたという状態ではないので、死者はそうはいないだろうと思われます。
もっとも被害の大きいルイジアナ州のエドワーズ知事が「死者は相当数に上るだろう」と発言したと報じているメディアがありますが、これは「把握できていない死者がいる」もありつつ、「まだ危険は去っておらず、これから先に相当数の死者が出る」という意味であり、知事は避難した人たちに「しばらく戻るな」と呼びかけています。
地域によってはこれからなお降雨が予想されていて、川の氾濫や道路の陥没や土砂崩れなどもあり得て、なによりインフラが徹底的に破壊されたためです。
他州を合わせて百万世帯以上が停電し、ルイジアナ州では夜間外出禁止令も出ています。携帯の中継所も停電したために、携帯がつながらないエリアが多く、これではSNSやYouTubeで中継してアクセス稼ぎができないではないかと怒っている人多数。かどうか知らんけど、そういう人たちもおるべえな。
電柱がなぎ倒され、送電線がズタズタであり、断水もしているので、多くの場所では数週間、すべて復旧するには数ヶ月かかるとのことです。冷蔵庫の中身が腐りますし、ロウソクが足りなくなります。実際、ランタンを使ったりしているので、火災も増えそうです。
なにより病院の機能が停止しています。緊急用の発電機は重油でしょうから、重油を運べばいいだけだとも思ったのですが、手術室など一部の電気しか賄えないため、日常的な業務はストップです。新型コロナごときは家で寝て治せばいいとしても、エアコンも使えず、水も飲めないので、熱中症で死にます。
上の動画にあるように重症の入院患者は別の州に移送しています。移送の途中で死ぬ人もいそうです。
文化財カルノフスキー・ショップも倒壊
それらに比べればたいした話ではないでしょうが、ルイ・アームストロングをサポートしたユダヤ人のテーラーであり、文化財として保存されていたニューオリンズのカルノフスキー・ショップは跡形もなく崩壊。
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