松沢呉一のビバノン・ライフ

子どもが次々と死んでいくインドの熱病と洪水の関係、そして日本のデング熱-(松沢呉一)

 

インドの謎の熱病

 

vivanon_sentenceインドで子どもたちが謎の熱病に罹ってすでに50人以上が亡くなっているという話がチラホラと日本でも報道されています。州政府はなお調査中で、インドの報道を見ても詳細がわからないのですが、死亡者でデング熱やマラリアに感染していた例が複数確認されているので、新しいウイルスではなく、それらの病気が蔓延し、重症化する条件が揃ったのではなかろうか。情報が少ないのでよくわからんですけどね。

 

 

この動画は8月3日公開のもので、死者数40人になっていますが、数字には幅があって、最大数は68名です。数字がバラバラなのも公的機関の発表が遅れているためです。

デング熱は2013年に代々木公園で蚊に刺された人たちが感染して、日本で媒介になるヒトスジシマカの駆除をしたり、各地の公園が使用禁止になったりするなど、ちょっとした騒ぎになったことがあるので、記憶が残っている方も多いでしょう。私も「熱が出て、関節痛や頭痛があるだけで、そう簡単に死ぬわけではない病気なんだから、ほっとけばいいべ」とこの時もテキトーだったことを覚えてます。

この時は66名が感染したとされていますが、感染者の半分以上は発症しない病気ですから、66名は発症した人だけでしょう。実際の感染はもっといたはずですけど、死者はゼロ。

インドの例を出すと、今年は5月31日までに6,837件の感染報告があり(これもほとんどは発症例だろうと思います)、うち2名が死亡。発症した人の3,400人に1人。感染者全体の致死率は1万人に1人といったところ。

2017年には325人亡くなっているので、今年は数字が激減しています。なのに、8月18日以降、インド北部のウッタル・プラデーシュ州フィロザバードという地域だけで、2週間で40人から70人程度の死亡者が出ていて、死者は圧倒的に子どもに偏り、デング熱だとしても異常な数字だとしてインドでは騒ぎになっているわけです。

この熱病の感染者は3,719人いて、死亡者はその1パーセント以上ですから、死にすぎです。死亡した子どもの年齢分布は不明ですが、おもに乳幼児ではなかろうか。上の動画の中に出ているのは10歳くらいでしょうが、サムネイルは乳幼児です。

 

 

洪水と感染症の関係

 

vivanon_sentence背景にあるのは洪水との指摘もなされています(洪水地域と熱病発生地域が重なっているのかどうかまでは確認できず、以下はあくまで私の推論です)。

8月6日からの数日間、ウッタル・プラデーシュ州の488の村が洪水に見舞われ、少なくとも104,704人が被災し、880以上の避難所が設置され、6,237人が収容されました。

タイミングから見ても、この洪水が熱病に関与していそうです。避難所は壁もないようなテントもありましょうから、蚊を防ぐこともできず、デング熱やマラリアが広がっているというわけです。

衛生環境ともうひとつの要因は食糧です。この辺は農村地帯で、ふだんは食うものには困らないのが、洪水で作物は流されたり腐ったりして、十分に援助が届いていないのかもしれない。母親は乳が止まり、粉ミルクも届かないところでデング熱やマラリアに感染すると、乳幼児の死亡率は高くなるでしょう。

そうとでも考えないと、子どもが発症から間もなく次々と死んでいくなんてことは考えにくい。私の「素人考え」では考えにくいってことであって、それこそデング熱でもマラリアでもないのかもしれないけれど。

当然新型コロナの感染も避難所を中心に拡大していそうですけど、そこまではわかりませんでした。

※2020年8月10日付「FloodList」 水害についてはこの記事に詳しく出ています。

 

 

next_vivanon

(残り 965文字/全文: 2554文字)

ユーザー登録と購読手続が完了するとお読みいただけます。

ウェブマガジンのご案内

会員の方は、ログインしてください。

« 次の記事
前の記事 »

ページ先頭へ