人工知能の顔認識のバイアスと人間の顔認識のバイアス—ニューヨークの洪水とカタルーニャの洪水-(松沢呉一)
「アイダはNJとNYもズタズタにして去っていった—マダガスカルでは気候変動による飢餓が始まっている」の続きです。
ニューヨークの洪水とカタルーニャの洪水
ハリケーン・アイダと元ハリケーン・アイダの低気圧による死者は全州で50名を越えて、大きな衝撃を与えています。とくにニューヨーク市が直撃されたことが大きかったのでしょう。
死者の多かったニューヨーク州では50年に1度とか200年に1度とか言われています。これらの数字の違いは降雨量で見るか、被害規模で見るかの違いかと思われます。あるいは適当な数字を出しているだけか。
降雨量で言えば今後はアイダ・レベルが数年に1度になっていきそうで、次回までに抜本的な対策は間に合いそうにない。原因として挙げられている中で、「排水溝がゴミで埋まっていて、水が流れなくなっていた」という点については早急に改善できるとして、これだけでは解決しない。「地下に住むな」ってわけにはいかんですから、事前に避難を呼びかけるくらいしか効果的な方法はなさそうです。
同じ時期にスペインのカタルーニャでも洪水がありました。
これは洪水が去ったあとの映像なので、どういう状況だったのかわかりにくいですが、豪雨で道路が川のようになって、大量の車が流されています。ただ、家が流されるような状況ではなく、竜巻が起きたわけでもなく、地下に住んでいる人もまずおらず、死者は一桁に留まってます。
アイダに比べて規模が小さく、被害も小さいので、日本語メディアの報道は見当たりません。しかし、カタルーニャと同じ規模、同じ被害でも、ニューヨークだったら報道されそう。ニューヨークにメディア各社の支局があるため、上の動画のような独自の取材ができるのに対して、スペインに支局を置いている日本のメディアは少ないってことも関係してましょうけど、なによりニーズです。
東南アジア、南アジア、ラテンアメリカ、アフリカで洪水が起きてもなかなか報道されないのもニーズ。読まれないものは取り上げられない。
人は知っている場所に興味を抱くので、そうなるのは当然。私もニュージャージーとニューヨークは行ったことがありますが、スペインには行ったことがないです。それでもカタルーニャは「ポストコロナのプロテスト」で思い切り関心を強めていて、行ったことがなくても関心は抱けます。
人工知能は人間と同じ欠陥をもつ
アイダの被害について読んでいる時に、「ニューヨーク・タイムズ」に身につまされる記事が出ていることに気づきました。
黒人を取り上げたFacebookの動画に「霊長類」というラベルがついて、「さらに霊長類の動画を視聴しますか?」とのタグがつけられたという内容。すべてAIの顔認識が勝手にやっていることなのですが、Facebookは謝罪。霊長類と出てしまったのは不幸だけれど、意図的にやったわけではなく、しゃあないと思うなあ。
以前から顔認識には人種的バイアスがかかり、同一人物であると認識することにおいても、別の人を同一人物であることについても、白人よりも非白人で誤認識が起きやすいと指摘されています。
Googleでも同じようなことがあって、Facebookはバカ、Googleはバカ、AIはバカってことですけど、「人間はバカ」ってことでもあります。
それだけではないかもしれないですが、この原因は顔認識に使用しているサンプルの偏りによるものだと指摘されています。Facebookは実際に使用されている例もデータとして取り込んでいましょうけど、Facebookの利用者に人種的偏りがあるので、どうしてもそうなるのだろうと想像します。
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