松沢呉一のビバノン・ライフ

東京オリンピック女子5,000メートル4位のアグネス・ティロップ選手が殺された—ケニアの英語とスワヒリ語-(松沢呉一)

 

世界記録を樹立した選手が殺された

 

vivanon_sentenceケニアでは、アグネス・ティロップ殺害のニュースで大騒ぎです。

 

 

私は東京オリンピックになんの興味もなかったですが、女子5,000メートルで4位になり、東京オリンピックのあと、10,000メートルで世界記録を樹立しているアグネス・ティロップ選手が自宅で刺殺されているのが発見され、容疑者の夫は行方をくらましています(追記:逮捕されたと報じられていますが、詳細は不明)。

ウフル・ケニヤッタ大統領も長文の追悼文を発表するくらいの大ニュースとなっております。

この報道を含めて、ケニアのいくつかのテレビニュースを観たのですが、アナウンサーはすべて英語です。警察、知人、一般の人のコメントは、英語だったり、スワヒリ語だったりです。

スワヒリ語に英語のテロップがついたり、英語にスワヒリ語のテロップがついたりはしておらず、つまり、ケニア人は誰もがどちらも理解できるという前提になってます。

ケニアでは英語とスワヒリ語のどちらも公用語です。複数の公用語がある国では、大きくふたつのパターンがあって、ひとつはエリアで分かれているカナダやスイスのパターン。もうひとつはアフリカでよく見られる土着の日常語と学校で学ぶ植民地時代の宗主国の言葉の併用。民族、つまり人で言葉が分かれるような例もあるかもしれないですが、知っている範囲ではこのふたつ。

ケニアは「土着語+宗主国語」に属するのですが、私が考えていたよりも、もう少し事情は複雑でした。以下、その辺を見ていきます。

 

 

シンノスケ・チャンネルより

 

vivanon_sentenceケニアの言語については以下が参考になります。

 

 

 

 

チェカTVのスタッフだったシンノスケ(慎之介)氏のチャンネルです。彼はコロナで一時帰国していたのですが、またケニアに戻っています。地味と言えば地味ですが、住んでいる人しか見えないことを教えてくれる彼のチャンネルが私は好きです。

一般的とは言えないまでも、カエルもヘビもサソリも行くところに行けば日本でも食べられます。しかし、ほとんどは中国からの輸入でしょう。複数の人がテレビで観たと言っていることから、日本でゲテ料理の店を取材した番組があったのかもしれない。例外として紹介していても、それがその国全体だと思うのはよくあることです。

もちろん、中国か東南アジアのどこかの国と間違えている可能性も十分あります。ケニアにも日本と中国と韓国の区別がついている人はいますけど、区別がついていない人、交じり合っている人が大半かと思います。私もアフリカの国々の違いを正確には言えず、ケニアと他国と情報が混乱していることは多々ありそうです。

これを見ていただけるとわかるように、シンノスケ氏はスワヒリ語がペラペラ。英語で事足りるので、ビジネスだけならスワヒリ語を覚える必要はないのですが、チェカフェのユーキ氏も挨拶ではよくスワヒリ語を口にしています。アサンテ(Asante)はありがとう。ジャンボ(Jambo)はこんにちは。このくらいは私も知ってましたがもユーキ氏は子どもたちに食事を渡す時にカリブ(Karibu)と言っていて、どういう意味か気になって調べたら、「いらっしゃい」でした。

 

 

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