松沢呉一のビバノン・ライフ

テレビで号泣した話—「コメットさん」と「どうぶつ奇想天外」-[ビバノン循環湯 598] (松沢呉一)

ギンビス「たべっ子どうぶつ」が若者の間で大ブーム、その理由とは」という記事をたまたま読みまして、そういえば「たべっ子どうぶつ」についての原稿を昔書いたことがあったなと思い出し、発掘してみました。1998年に「URECCO」の連載に書いたものです。ホントにくだらない原稿をいっぱい書いていたものです。

 

 

 

大場久美子のコメットさん

 

vivanon_sentence よく中年男がダジャレを言うと、「オヤジギャグ。バッカみたい」と若い娘っこはすぐに軽蔑した態度をとる。これは大きな間違いであることを、私は身をもって証明できる。

最初は九重佑三子が主演で、数年後に大場久美子が主演で新シリーズをやった「コメットさん」というテレビドラマがあったじゃないですか。

 

 

 

 

 

大場久美子がやっていた第二期、私は大学生で、あれを見て、「オメッコさん」というドラマをずっと妄想していた。宇宙からやってきたオメッコさんはヤリマンで、何かあると、誰とでもすぐにセックスするのである。楽しそうなドラマでしょ。

つまり、私は若い頃からエロをからめたダジャレを日夜考えていたのである。

いつからこういうことばかりを考えるようになったのか、はっきりとした記憶はないが、小学校の高学年の頃にはエロ話を作っては友だちに聞かせ、チンコを勃起させてやることが得意だった。「おい、また聞かせてくれよ。今回は大人の女の話をひとつ頼むわ」なんてリクエストするヤツまでいたぐらいだから、小学生としては、そこそこ完成度の高い話をしていたんじゃなかろうか。単に勃起させるだけじゃなく、飽きないように笑いもちりばめ、たぶん、あの頃から、エロ系ダジャレを駆使し始めたのだと思える。

ほら、手塚治虫と同じですよ。ガキ大将にいじめられないように手塚治虫はマンガを描いたのとまったく同じ意味で、私はガキ大将にいじめられないようにエロ話をしていたのだ。

このように、四半世紀以上にもわたってエロ系のダジャレを考え続けているのであって、中年になって急にこうなったわけではないのだから、「オヤジ」とバカにされても困るのである。考えようによっては、昔からバカなオヤジって話だけどな。

ただし、これだけは言っておかねばならない。私はただのバカでもスケベでもなくって、人一倍、感受性が強いのだ。音楽を聞いてすぐ泣くし、テレビとか映画にも弱くて、よく泣く。徳光さんクラスと思っていただいて間違いない。感受性と関係がなく、単なる泣き虫とも言えるが、人が死んでもわりと平気なんだな(人と状況にもよるけれど)。

 

 

「どうぶつ奇想天外」で号泣した

 

vivanon_sentenceつい最近もTBS「どうぶつ奇想天外」で、犬の話をやっていて(1998年6月6日オンエア)。これを観て、ボロボロ泣きましたぜ。

第一話は、産婆犬の話。酪農家で育てられている犬がいて、こいつがものすごい能力をもっている。しばしば牛は子供が大きすぎて、自力で出産できず、人が手伝ってやらなければならない。産気づいたことに気づかず、死産になることがあるため、牛小屋に監視カメラを設置している酪農家もある。

ところが、この犬ときたら、牛が産気づくと、牛小屋から30メートルも離れた母屋でこれを察知し、人に知らせるのである。はっきりとはわからないのだが、破水したことを嗅覚で知るようだ。そして、飼い主が扉を開けると、犬はものすごい勢いでその牛をところに行き、母牛から出てきた子牛をベロベロなめてやる。こうすることで子牛は皮膚を刺激され、立ち上がろうとするのだ。

そして、数カ月後。子牛が売られていく日がやってくる。わが子のような子牛が売られていくことをヤツはしっかり知っていて、それをくい止めようと騒ぐ。子牛を載せた軽トラックが走りだすと、犬は飼い主の手を離れて、そのトラックを追いかけ始める。トラックを追い抜き、トラックの前に飛び出し、自分の体を賭けてトラックを止めようとするのだが、やがて力尽きて、トラックは遠くへ去っていくのだった。

これもいい話だったが、ここではまだ泣かない。大人の男がそう簡単に涙を見せるわけにはいかないものだ。

※今も新シリーズがTBS系列でオンエア中

 

 

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