松沢呉一のビバノン・ライフ

難民増大と人口とコロナ対策—ケニアで人口抑制策はどう実行されてきたのか-(松沢呉一)

ビル・ゲイツの発言で人口抑制策の意義を知る—感染症のワクチンが人口抑制になる理由」の続きです。

 

 

トルコもギリシアもこれ以上難民は受け入れられない

 

vivanon_sentence難民について読むのは辛い。辛いけれど、この記事は読んだ方がいいと思います。

 

2021年10月10日付「時事ドットコムニュース」

 

トルコは400万人の難民を受け入れていて、すでに限界。

ギリシアにもシリア難民のキャンプがあって、すでに限界。

これとは別に西アフリカからスペインのカナリア諸島に向かうルートもあって、そちらも以前から受け入れ先がなく、海上で死亡、または行方不明になる難民たちが問題になってましたが、コロナ禍によって難民が増加し(コロナ対策が難民を増加させたと国連も指摘しています)、もはや手の打ちようがない。

ヨーロッパのどこかの国が受け入れてくれるならいいのだけれど、ヨーロッパ各国は多数の難民を受け入れてきて、これ以上の難民を抱え込むと、外国人排斥を主張する極右勢力の支持が増えますし、移民のムスリムが反ユダヤを主張することも危険。

これも人口問題が背景にはあって、農地に向く土地があれば難民を受け入れられますが、そんな土地があったらすでに誰かのものです。

世界は人間で飽和しています。その点、日本や韓国は少子化が進んでますから、少々人が入ってきても余裕がありますけど、国民に受け入れる心構えができていない。私もできていない。

私ができているのは、現在、コンビニで働いている留学生たちのように、将来にわたって日本に住むことを前提として、会話のみならず、読み方ができるくらいに日本語ができる人たちの受け入れに対する心構えです。日本語ができることが条件なのは、心情的な問題だけでなく、仕事の選択肢が大きく広がるためです。日本で暮らすことに不満が生じにくく、よって波風が立ちにくい。

その人たちを今以上に日本が受け入れ、香港からも受け入れて、イギリスが受け入れる香港からの移民分が少し楽になって、その分、アフガニスタンやシリアの難民をあっちが受け入れられるかもしれない。

そういった間接的貢献と、金銭的貢献以外、日本にできることはなさそうです。

 

 

人口抑制策をどう実践してきたか

 

vivanon_sentence本来であれば距離や文化が近く、場所によってはスワヒリ語が通じるアフリカ内で移動するのがもっともスムーズですが、アフリカにはその余裕がない。だから、人口抑制が必要。

人口抑制と経済発展とは密接な関係があります。子どもの多い家庭では、子どもたちは十分な教育が受けられず、幼い頃から働かなければならないことにもなるのですが、国家全体においても同じです。教育を受けて、職業技術を身につけるためには人口が適切である必要があり、人口抑制に成功している国が経済発展をする傾向があります。経済が発展して雇用を生むにも人口抑制が必要なのです。

それをどう実現してきたのかについては「心のナチスも心の大日本帝国も抑えろ」シリーズを読んでいただければだいたいのことはわかりますが、ここでも簡単に見ておきます。

人口抑制策は具体的には避妊方法を知らしめることから始まります。パンフの類いも配布しているでしょうが、文字が読めない人にパンフを配布しても意味がないので、テレビCMを流す。生理用品だって買えないような貧困地域にはコンドームを無料配布する。相談所を設置して、その人、その夫婦、その家族に合っている避妊方法を教えて実行させる。

そういう場所に来られる人ばかりではないので、村々に入っていて、時間をかけて、「子どもが多いことで子どもの教育機会が減ってしまい、それが貧困を生む」と説明をして、避妊を実践する人を増やしていく。

地味な活動なのです。

炊き出しは自然に笑顔になって、感動もあります。だから寄付も集まります。

しかし、産児制限の啓蒙活動を動画にしたって感動はしにくい。私はデータで感動できますけど、涙は出ない。「たくさん子どもを産むのが一族にとっての幸福であり、それが女の役目」と思われている社会において、「その考えが唯一絶対ではない」と言って回るのですから、追い返されることだってあるでしょう。事実、今でもアフリカ諸国には、産児制限に反対しているコミュニティが少なくありません。ケニアにも女は十人以上子どもを生むべきとしているコミュニティがあります。

PSI(Population Services International)のサイトより団体の方針を説明した「OUR COMMITMENTS」に書かれた「消費者の手に直接委ねること」という考え方。消費者が決定するための知識や体制作りをPSIはやっています。こういうりを読めば、人口問題を考え、対策をとることがナチスの優生思想と同じに見えるような馬鹿げた姿勢をとりようがないと思うんですけどね。

 

 

ケニアのトラスト・コンドーム

 

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コンドームのCMを観ても、その背後で活動している人たちの姿は見えて来ないのですが、ただコンドーム・メーカーが売上げのためにCM をやっているのではありません。

 

 

 

 

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