松沢呉一のビバノン・ライフ

止まらない水害・止まらない肉の高騰—気候変動が直視されない現実を確認-(松沢呉一)

 

牛肉や羊肉の高騰が続く

 

vivanon_sentence定価があるものと違って、肉の場合は産地や部位によって違ってくるし、店によっても大きく違うため、はっきりと「このくらい値が上がった」とは言いにくいところがありますが、それでも昨今スーパーでの牛肉の値段が高くなっていることは容易に察知できます。

牛肉の高騰を「新型コロナによって米国の加工業で人出不足が起きて生産量が低下している」とだけ説明している報道があって、それも一因ではありつつ、これだけだと気候変動が背景にあることがわからんべ。需要が増大して、中国が米国産を買い漁っていることを原因としている報道もありますが、これは以前から起きていたことです。

それらと同時に、オーストラリアは干ばつのために小麦の生産量が減って飼料が高騰し、オージービーフの価格が上がったこと、中国は水害のために飼料となるトウモロコシの生産が減ったことも影響しています。

牛肉の高騰は世界中で起きていることですから、値段が安いわけではないですが、量を確保するため、今まで見たことのないウルグアイ産の牛肉が出回っていて、ラムをプッシュしている店もあります。ちょっと前からラムが高騰しつつあったのですが、スーパーで見たら、骨付きラムが100グラム500円ですよ。なにそれ。「牛がなければ羊があるさ」では対処できず、むしろ私はラムの高さで、ミートショックの深刻さを実感しました。

飼料の値上がりと牛の需要を吸い上げているためだと思いますが、牛肉ほどではないにせよ、豚肉も高くなっていて、鶏肉、鶏卵もいくらか値が上がっている印象です。

 

 

牛肉高騰による閉店が出かねない

 

vivanon_sentence松屋ねぎしなど牛肉がメニューの中心である食い物屋は着々値上げをしている一方で、利幅を抑えることで対処している小売りや食べ物屋も多いため、値上げをしている印象は和らいではいますけど、とくに牛肉をメインにしている食い物屋は大変だと思うなあ。焼肉屋のほとんどがそうですが、ハンバーガーも薄利になっていましょう。羊肉がメインのジンギスカン屋や中華系羊肉鍋屋も同様。

中華屋で今まで700円だった青椒肉絲定食が急に1,000円になったり、焼き肉屋のランチで1,000円だった焼肉定食が1,500円になったら頼む人はいなくなりますから値段を抑えている店は多いでしょうが、今までの値段だと赤字です。

ここに来て閉店している飲食店がチラホラありますが、牛肉高騰閉店も出てきそうです(飲食店はつねに潰れて、つねに新規開店している状態で、一昨年・昨年の同期に比して、ステーキ、焼肉関係の店が多く潰れているという傾向は見つけられず。先月、肉の万世が秋葉原の本社ビルを売却したことが話題になってましたが、これはコロナの影響でしょう)。

コロナ禍によって処理過程が停滞しているための生産量減少のように、時間が経つとともに解決する部分は別として、オーストラリアの干ばつは解消される見込みはないですし、中国の洪水も解消される見込みはありません。

牛タンのねぎしによる販売価格改定のお知らせ。牛タンの仕入れ値が3倍になったってよ。そりゃもう値上げするしかないですけど、客数は落ちそうです。部位によっても幅は違いますが、牛肉の仕入れ値はだいたい1.5倍〜3倍程度の値上がり。

 

 

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