松沢呉一のビバノン・ライフ

全国フェミニスト議員連盟の人たちはなぜ自分らがフェミニストであると思えているのか—道徳がフェミニズムに見える人たちの仕組み[1]-(松沢呉一)

フェミニズムで偽装したパターナリズムが通用しなくなった画期的事例—全国フェミニスト議員連盟によるVTuber排斥問題[上]」「赤い口紅をつけて性的アピールをする「フェミニスト」が「女が腹を出すこと」を否定するダブスタ—全国フェミニスト議員連盟によるVTuber排斥問題[中]」「自分の感覚が世界の基準と錯覚できる人たちの危険性—全国フェミニスト議員連盟によるVTuber排斥問題[下]」の続編です。

 

 

 

道徳団体がフェミニズムを名乗ることの間違い

 

vivanon_sentence全国フェミニスト議員連盟の難癖活動を見ていて、つくづく「偽装フェミニスト」「詐称フェミニスト」はタチが悪いと思いました。自分らが何者であるのかの自覚がないからです。

当然のことながら、「自分たちを不自由にしているのは全国フェミニスト議員連盟のような存在ではないか」と気づいた女たちは少なくないだろうと思います。この視点は正しい。

しかし、この時に「フェミニズムが自分たちを不自由にしている」と思ったのだとしたら不幸です。全国フェミニスト議員連盟はフェミニズムに基づく団体には見えず、フェミニストと名乗るのは偽称、詐称というべきです。あの人たちを操っている原理は道徳であって、フェミニズムではありません。よって、あの団体に疑問を抱いたからと言ってフェミニズムを敵視するのは間違いです(つっても、同類の自称フェミニストがあまりに多いこの国では、あれこそがフェミニズムだと思う人たちが出てきてしまうのもまたやむを得ないかと思いますが)。

あの団体の主張を正しく団体名にするなら「全国家父長制道徳保存連盟」といったところでしょう。そのことを改めて確認しておきます。

以前使った明治時代の水着写真 この水着はツーピースだと思われます。この時代としては珍しい。しかし、しっかり帯をしてます。万が一へそが出たら一大事。全国フェミニスト議員連盟に難癖つけられます。なお、脇を晒してもは法には触れませんでした。そのため、レビューダンサーも脇は見せたわけです。レビューダンサーはあえてワキ毛を伸ばしていたのもいましたが、一般に洋装をする人はこの時点でワキ毛は剃っていたと思われます。一般にワキ毛を剃り始めたのは戦後のことと思われていますが、「ワキ毛の剃り始めは明治時代」という我が主張を裏付ける写真でもあります。

 

 

FREE THE NIPPLE」と真っ向から対立する全国フェミニスト議員連盟

 

vivanon_sentence「ビバノン」でも何度か取り上げてきた「FREE THE NIPPLE」あるいは「WE THE NIPPLE」といった行動があります。両者はアプローチが少し違うのですが、男の乳首は公然と晒せるのに、女が乳首を出すと猥褻とされることに異義を申し立てていることは同じ。その上で、後者はFacebookやInstagramで削除対象にされることに対する抗議をしています。つまりは表現規制や検閲の問題としてこれをとらえています。

どちらも私は理解できます。男女同じ扱いでいいでしょう。なぜ乳首が不均衡な扱いを受けてきたのかと言えば、乳首は育児用の器官であり、子育てのために存在する乳首は晒すべきではないという考え方がありそうです。母性保護の観点と、誰にでも乳首を晒すようなはしたない女に対する制裁です。

「女の乳首は性的器官である、よって晒すのは猥褻である」という考えもありましょうが、男の乳首だって一緒だって。認識していない人もいましょうけど、なめられたり、つねられたり、針を刺されたり、万力で潰されたりすればヒーヒー喜ぶ人たちがいっぱいいます。

 

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