松沢呉一のビバノン・ライフ

派手な洪水と地味な洪水—インドとネパールの洪水/タイの洪水-(松沢呉一)

インドとネパールの洪水

 

vivanon_sentence今現在、トレンディな洪水はインドとネパールです。「またか」って感じですが、この数日でネパールで亡くなったのが88名、これに北部インドの2州の死者を合わせると、少なくとも180人に達してます。さらに行方不明者が数十人いるので、最終的には200名を超えそうです。

 

 

 

この映像を見ればわかるように、ネパールやインド北部では、山地で土砂崩れが起きているために死者が増大しています。洪水の被害は平地と山地では全然違い、山地では川も濁流になりやすく、堤防が決壊した時の被害も大きい。

インドやネパールの洪水は毎度のことではあれども、今年の頻発はさすがに異常。死者が多く、建造物の被害が大きいだけでなく、農作物も壊滅です。ここまでの同エリアの洪水同様、ヒマラヤの雪解けが急速に進んでいるためだとされています。もう止めようがなく、これからどんどんひどくなりますし、洪水被害の範囲が拡大していきます。

 

 

タイの洪水に注目

 

vivanon_sentenceもうひとつ注目すべき洪水エリアはタイです。9月下旬から始まって、今も完全には危機は去っていない模様。

先日取り上げたTJチャンネルがタイの洪水被災地への救援活動をやった回をアップしてます。

 

 

長いですけど、長さが必要なこともあるってもんです。

この活動はナイスです。救援活動がナイスなのと、現地の様子がわかったのがナイス。

9月のパタヤの洪水はまだしもわかりやすかった。膝まで達した濁流が道を流れて、車やバイクが押し流されていく。ドイツや中国の洪水ほどではないにせよ、洪水らしい洪水でした。

対してその後のタイの洪水(9月下旬からの豪雨による)は写真や動画を見ても、辺り一面水浸しの水郷状態であることがわかるだけで、濁流も地すべりもなく、死者もほとんど出ていない(9月下旬以降の水害での死亡者は一桁だと思われます)。

例えばこれ。

 

 

「水が豊かなタイの観光映像」と言われれば信じそうです。AP通信の映像ですが、再生回数はわずか3桁。

「東南アジアの雨季にはよくあること」にしか見えず、実際、よくあることの延長なのですが、通常であれば短期で終わるはずのことが、雨が降り続け、そのために低地に水が溜まって長期化。TJさんの映像を見ればわかるように、家の中まで水浸しの状態が続いています。

この日も雨が降っていて、これまでの蓄積があるため、わずかに雨量が加わるだけでまた河川が溢れかねない場所では危険な状態が続いているようです。1ヵ月経ってもなお洪水の危機が去らない事情がよくわかりました。衛生状態も悪く、感染症が拡大しかねないという意味でも危険です。

このリアリティは、短い報道映像では伝わらない。それより濁流で家が倒壊し、橋や道路が崩落し、人が生き埋めになっている映像の方がインパクトがありますので、報道はインドの洪水を取り上げます。ヘリコプターからの映像は緊迫感がありますよ。私もそっちをつい観てしまいます。

でも、「地味な洪水」も見ておいた方が良く、これは見せ方なのだと思いました。数時間かけて援助物資を届けつつ、現地を歩きまわったTJさんの映像もまた説得力がありましょう。

 

 

next_vivanon

(残り 1678文字/全文: 3167文字)

ユーザー登録と購読手続が完了するとお読みいただけます。

ウェブマガジンのご案内

会員の方は、ログインしてください。

« 次の記事
前の記事 »

ページ先頭へ