松沢呉一のビバノン・ライフ

どこまで逃げても中国共産党が追ってくる—国外脱出した香港人たちのあまりに過酷な現実[下]-(松沢呉一)

香港の現在—国外脱出した香港人たちのあまりに過酷な現実[上]」の続きです。

 

 

 

華僑組織にも頼れない香港人たち

 

vivanon_sentence香港から脱出した人々についての記事はできるだけ読むようにしてましたが、2021年10月21日付「NHK NEWS WEB」掲載「「イギリスなら安全」は幻だった 香港の人々はいま」に出ている、就職先が中国系企業しかない元香港人の話や香港出身者が多い英国の華僑は中国政府支持、国安法支持を表明したために頼れないとの話は予想を越えていました。辛すぎる。

香港出身の華僑が中国共産党を支持する事情がよくわからないですが、中国共産党は出身を問わず、各国で華僑の取り込みを図っていて、従わない者には嫌がらせや脅迫をすると言われています。また、本土から英国に来ている中国人の方が香港出身者より多く、共産党支持をしないと客を逃すってこともあるかもしれない。

東京にも香港料理店はけっこうありますが、民主化支持の香港人たちはそういう店も安易には頼れないのか。香港人にも中国共産党支持はいるので、無条件に味方にはならないのは当然として、疑心暗鬼になって味方になるはずの人を探すのが大変そうです。

香港の話が聞きたくて、時々前を通りかかる香港料理店に行こうとしたこともあるのですが、緊急事態宣言で休業してしまって果たせませんでした。そろそろ営業再開しているかもしれないですが、そういう店で下手に民主主義支持の姿勢を見せると密告されそう。私が密告されてもなんも困らないですから、共産党支持者だったら罵倒して帰ってきますが、もし店の人が民主化支持だとしてもいきなり来た日本人の客に本心は言えないでしょう。

中国以外の国の人でも、会ったばかりの日本人に本心を語ることを躊躇していると思われる瞬間があります。警察や入管にチクられるのが怖いのと、そのことが同国人にばれることが怖い。とくに監視の厳しい中国では後者が大きい。

香港に移住した人たちのインタビューでも、自分自身は民主化運動に関わっていなかったと言っていることがよくありますが、関わっていても言わない人は当然いるでしょう。

※2021年9月10日付「Los Angeles Times」 この内容も厳しかったです。英国に移住しても身元がわかることが怖いので、フルネームを言えない香港人。英国で中国人差別の対象になるという話も辛い。その中国と闘って逃げた人たちなのに。中にはそうとわかれば同情するのもいましょうけど、中国人、あるいはアジア人はもろともすべて嫌悪の対象の人たちもいましょうね。もちろん、これは一部の英国人であって、大多数の英国人は香港人であることを理解して、歓迎していますが、「私たちは移住していない、今も逃げている」という言葉が重い。中国共産党のスパイやシンパの中国人がいる場所のみならず、中国人だとしてまとめて差別する人、中国共産党に媚びる人がゴロゴロいる場所では安住できないのです。

 

 

どこにでも中国共産党のシンパがいる

 

vivanon_sentence英国にいても中国人からの嫌がらせがあるのは予想がついてました。民間人、あるいは留学生と言っても、中国人の場合はスパイである可能性がゼロではなく、スパイじゃなくても、いざという時は自分の保身のために密告もするし、反中国の活動を妨害もします。これまでにもいくつかの国でそういう動きがありました。

香港の学生たちによる民主化運動に反対する学生たちの「暴力学生反対」の動きが起きていましたが、天安門事件もウイグルやチベットでの暴力もアフリカ大陸での暴力も見ずして、香港の学生だけを問題視する都合のよさ。

共産党員は1億人近くいて、人口の6パーセントから7パーセントに達します。

 

 

 

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