松沢呉一のビバノン・ライフ

これから飲食店は本格的に厳寒を迎える—緊急事態宣言を解除しても少しも元に戻ってない-(松沢呉一)

 

繁華街に人が戻ってこない

 

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コロナ禍以降、時折、「ビバノン」のPVについて触れてましたが、今月、ついに元通りになりました。平均を出すと、コロナ禍前よりなお数パーセント多いかもしれないですが、ほぼ同じです。それまでの3倍くらいのPVが続いていた時期もあったのに、元通りかあ。

異常な状態が終わって元通りになるのはいいことですけど、あらゆるものがPVと同じようには元通りにはなりそうにない。

人混みが大好きなので、緊急事態宣言が解除されて繁華街は元通りになって欲しいのですが、歌舞伎町はちいとも元通りにはなってません。相変わらず人がいないのです。

若いグループはいるのですが、会社帰りのサラリーマン集団みたいなのはほとんど見かけず、食い物屋で大きな金額を落とす層がいない。大人のカップルもあまりいない。

緊急事態が長く続きすぎ、生活スタイルが完全に変わってしまって、元に戻せない状態になっていそうです。こんな状態が続くと、ボッタクリで生き延びようとする飲み屋が増えて、いよいよ人が寄り付かなくなるのではなかろうか。

 

 

居酒屋店員との会話

 

vivanon_sentence今週火曜日、歌舞伎町で暇そうにしている居酒屋の客引きと立ち話をしました。

「少しは期待もあったんですけど、悪い方に予想が当たりました。馴染みさんが集まるような小さなスナックやバーみたいな店は緊急事態宣言で蓄えまでできているし、客も戻ってきているでしょうが、居酒屋のように仕事のあとの勢いで入る店はどこも厳しいと思います。在宅勤務になったまま、会社にほとんど出ていない人もいるし、自粛気分のままの人も多いので、忘年会シーズンまでは客が戻らないんじゃないですかね」

「そんなに厳しいんか。忘年会シーズンまでに潰れる店も出そうだね」

「そういう話をよく聞きます。補償が出なくなったこれから本格的に潰れるって。居酒屋もそうですけど、飲食関係は利幅が減っているんですよ」

「小麦や牛肉が高騰して」

「そうそう」

私はおもに食糧危機として小麦やトウモロコシ、牛肉の不足をとらえていますが、店にとっては死活問題らしいですよ。牛肉ほど顕著ではないにせよ、肉全体が値上がりしているので、まったく無関係な店は少ないでしょう。

「歌舞伎町の店は常連相手ではないので、けっこう値上げしてますが、客の顔が見える店だと値上げもなかなかできない。量を減らしてごまかすか、他の商品で埋めるしかない。それでも食べ物はいい。デリバリーやテイクアウトが可能です。でも、酒は酒屋かコンビニで買っておしまいですから、飲み屋は他で穴埋めしようがない。うちは経営母体が大きいので、すぐに潰れたり、クビになることはないとは思うんですけど、店舗統合の話がチラホラ出ているので、先々どうなるかわからないです」

私は一人でしたから、彼は「来てください」とは一度も言わず、ただの暇つぶしの会話でした。午後7時頃で、まだ早かったためでもあるのですが、そのくらい暇だったのです。

※話をした客引きの店とは違いますが、これも午後7時頃の歌舞伎町の居酒屋。客はカップルが一組いただけでした。

 

 

新宿西口の喫煙所はサイコーの憩いスポット

 

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その日、新宿駅周辺でもっとも活気があったのは西口の喫煙所です。以前は西口を出てすぐ前に喫煙所があったのですが、いつの間にやらロータリーを渡ったところに移転。前よりずっと広くきれいになって、中は人でいっぱいでした(下の写真で、下部に広がっているのが喫煙所)。

新宿東口や南口、西武線の前にも喫煙所はありますが、西口が抜きん出て活気があって、新宿を代表する人気スポートです。

ここの中を歩くと、次々と違うタバコの香りを味わえます。楽しい。

 

 

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