松沢呉一のビバノン・ライフ

ケニアとドイツの感染者推移から見えてくること—ポンコツ変異ウイルスに期待-(松沢呉一)

 

アフリカの感染者推移

 

vivanon_sentence以下はケニアの感染者数の推移です。

 

2021年11月7日付「worldometers

 

アフリカ諸国はどこも同じように推移していて、8月に第3波あるいは第4波が来て、現在は落ち着いています。ケニアでは最大1日2千人を超えてましたが、現在は二桁が続いています。

エチオピアのように内戦状態にある国はそれどころではなく、感染者数を正確に把握できていないであろうことが想像できますが、ここに来て把握できなくなったなんてことはなく、条件は一定である上で、現在は落ち着いていると言っていい。

アフリカ諸国は、一部を除いて、現在もワクチン接種率が1割にも達しておらず、ワクチンが足りないばかりでなく、ワクチンがあっても接種する人がいません。これはアフリカの現状を考えると当然であることは説明した通り。アフリカで蔓延する他の感染症に比べると、新型コロナは軽い病気なのです。「あんなもんはほっとけばいい」あるいは「ほっとくしかない」という判断は適切です。

ワクチン接種率がおおむね7割以上になっているヨーロッパ諸国で感染者が増大しているのは皮肉です。これは季節の違いもありますが、そもそもワクチンの予防効果はあまり期待できないってことです。それでも死者数を見ると、ヨーロッパ諸国では歴然と減少しているので、重症化しない効果は間違いなくあります。その分、ワクチン接種によるものと思わしき死亡者も増えてますが。

 

 

ウイルスで死んだ人・ウイルス対策で死んだ人

 

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ここまで取り上げそびれてましたが、9月27日にFBIが2020年の犯罪報告書を出していて、暴力犯罪は2019年に比して5.6パーセント上昇。殺人の被害者は前年に比べて29.4パーセント増加。

米国の殺人事件発生率が世界標準のはずがないですが、仮にそうだとして計算をすると、世界で10万人以上が、コロナ禍によって余分に殺されたことになります。ロックダウンによるストレスが生じさせた家庭内の殺人が増加していたことは以前から報じられていた通りであり、この数字は納得しやすい。

これにアフリカ諸国の感染症による死亡者の増大、ロックダウンに伴う射殺やプロテストに対する射殺等を入れて、若い世代で比較すると、コロナによる死者数を超えるのではないか。

一方、ゼロリスク対策の雄である中国は、8月くらいからさまざまな点で失速しているように見えてました。武漢ウイルス研究所から漏洩したか否かはなおわからないとしても、初期に隠蔽したことは疑いがなく、当時、感染者数や死亡者数はごまかしていたとの指摘が内部から出ています。隠蔽体質、ごまかし体質は中国共産党そのものなので、すべてにおいてやっていると見ていいでしょう。

単純に数字を見ると、中国は感染者・死亡者ともに少ないわけですが、その分失っているものも大きくて、経済的なダメージを当面受け続けることになります。

英国を皮切りにヨーロッパ諸国が規制緩和をしつつあったのは、こういった数字を考慮してのことでしょうけど、その結果、ここに来て急速に感染者が増大しているわけです。

 

 

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