松沢呉一のビバノン・ライフ

自己決定を重んじるポーランドのフェミニスト・戦前の道徳を重んじる全国フェミニスト議員連盟—補足・追記特集[3]-(松沢呉一)

銭湯はサイコー・全国フェミニスト議員連盟はサイテー—補足・追記特集[2]」の続きみたいなものです。

 

 

中絶禁止により死亡したポーランドのイザベラさん

 

vivanon_sentence歴史観の欠落・世界を見る視野の欠落・「私」と「社会」を峻別する意思の欠落—道徳がフェミニズムに見える人たちの仕組み[3]」の追記です。

またポーランドでフェミニストたちが大規模なプロテストをやっています。

 

 

1年前の10月22日、ポーランドの憲法裁判所の判決によって、実質的な妊娠中絶の全面禁止が成立したポーランドですが、その1周年を1ヵ月後に控えた9月22日、ポーランド南部の町プシュチナにある病院で、30歳のイザベラ(Izabeli)が死亡(遺族の意向により、人物の詳細やフルネームは発表されていない模様)。

その数日前、妊娠22週で彼女は破水して病院に運ばれ、胎児に異常が発見されます。胎児が生きている限りは中絶ができず、胎児の死亡を待って手術をすることになりますが、措置が遅れたため、彼女は敗血症で死亡。

担当の医師2名が病院に処分されるのですが、彼らは厳密に法を守っただけです。

10月末、この件が弁護士と家族から明らかにされ、すぐさま抗議が始まって、11月6日土曜日に全国各地で大規模なデモンストレーションが行われました。

法によってイザベラは殺されたとプロテスターたちは言ってます。この法はカトリックの長年の策動によって成立しました。カトリックに殺されたと言ってもいいでしょう。

ポーランドのフェミニストたちの動きやカトリックの主張についてはたびたび「ビバノン」で取り上げてきました。自己決定の獲得で奮闘するポーランドのフェミニストを私は支持。全国フェミニスト議員連盟はポーランドの動きをちゃんと追って、日本でも広く知らしめるために尽力していますかね。それとも戦前の道徳維持を画策するだけか?

※2021年11月4日付「WIADOMOSCI」 6日の行動を前にこの件について改めて紹介するポーランド・メディア。頬にStrajk Kobietのマークが描かれています。プラカードの“Myśle czują decyzję”は「私の考えが決定する」みたいな意味かと思います。自己決定。

 

 

原油の価格上昇が与える影響

 

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続いては、「日本の食と「ひしゃげる(へしゃげる)」を守れるか—高騰する食糧と死語化する言葉」「止まらない水害・止まらない肉の高騰—気候変動が直視されない現実を確認」「どうせもうじき人類は滅びるよ—COP26に先立って発表された国連報告書」などの追記です。

牛肉・羊肉はスーパーでも歴然と高くなっていること、それらの肉を使っている食い物屋でも値上げが相次いでいること、小麦や砂糖が世界的に高騰しているため、パンやケーキ、お菓子の類も値上がりしていることはすでに確認した通りですが、直接には地球温暖化と関係のない原油の値上がりがジワジワとあらゆるところに影響を与えてます。

日本の場合は中国と違って、原料費の値上がりはすぐに電気料金に反映されますし(中国ではそれができないので、電力会社は半ば抗議として石炭発電所への規制に乗ずる形で停電を実施したということのようです)、ガソリン、重油、灯油のすべてが値上がりし、石油製品も値上がりしています。

 

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