松沢呉一のビバノン・ライフ

議員が唇を赤くして性的アピールをしながら、他者の性的アピールを潰したがる理由—ヴィルジニー・デパント著『キングコング・セオリー』[7]-(松沢呉一)

売春はハードドラッグと似ている—ヴィルジニー・デパント著『キングコング・セオリー』[6]」の続きです。

 

 

 

戸定梨香の件をキングコング・セオリーで読み解く

 

vivanon_sentenceヴィルジニー・デパントが売春をしていた時は、赤い口紅をつけていたことでしょう。口紅はそういう意味合いのものです。

このシリーズの1回目に説明したように、ヴィルジニー・デパント著『キングコング・セオリーを読む気になったのは、戸定梨香の件があったからです。全国フェミニスト議員連盟のやっていることが私には理解できず、とてもフェミニズムに則っているとは思えないのですが、『キングコング・セオリー』は全国フェミニスト議員連盟はどういうスタンスから活動をしているのかの解説になっている部分があります。それを見ていくことにします。

ヴィルジニー・デパントはこんなフレーズを書いています。

 

なるほどたしかに、デコルテや真っ赤な唇で男の理性を失わせるのは気分がいい。

 

本書にたびたび出てくるデコルテって言葉は時々聞きますが、意味はわかっておらず、この機会に調べてみたら、胸元、鎖骨、肩、背中などが開いたドレスや下着のこと。また、露出される部位のことで、鎖骨のことをデコルテと呼んでいる例がよく見られます。

腹や脚はデコルテには含まないでしょうが、意味合いは同じです。それを露出することと真っ赤な唇は同じ意味(になり得る)。政治家が娼婦と同じ「女らしさのアピールをして快楽を得ること」の是非については意見が別れましょうが、ともあれそれとこれとは同じ意味合いがあるということを確認します。

木下富美子都議があの日、80万円の高級時計をしてきた神経と、腹出しVTuberを問題視する全国フェミニスト議員連盟のメンバーが目立つ口紅を塗ってNHKに出る神経は通じています。自分がやっていることの意味を客観的にとらえられていないってことです。島視点の典型と言ってもいいでしょう。木下富美子都議は「マスコミに注目される場」とだけ認識して、そこに高級腕時計をしていく。警察が腹出しキャラを起用することを非難する公的立場の議員が公共放送で口紅をつけて性的アピールする。どちらも私には意味がわからない。

※「胸元からデコルテあたりがセクシーなタイトワンピ」とあります。ここでは胸元はデコルテではないらしく、デコルテは鎖骨のことでしょうか。4,380円。このワンピースを際立たせているのが赤い口紅であることがよくわかる写真でもあります。

 

 

なぜ好んで女たちはセクシーな格好をするようになったのか

 

vivanon_sentenceなぜフェミニストと名乗る人があの文脈でわざわざ口紅を塗ってNHKに出なければならなかったのか、さっぱり意味がわからないわけですけど、『キングコング・セオリー』にはそれを説明するかもしれないエピソードが出ています。

1980年代ともなると、男と同じような生活をすることはヴィルジニー・デパントにとってたやすいことだったし、フランス社会ではすでにそれが可能になっていました。

しかし、対等になれたはずの時代に、妙なことが進行していました。男女が対等になるにしたがって、なぜか大衆文化の中でセクシーな格好が目立つようになったといいます。

 

街を歩いていても、テレビのバラエティ番組を見ていても、あるいは女性誌をめくっていても、娼婦にしか見えないファッションが若い女に広がっていて、しかも、それが似合っていることに驚かされる。実はこれは男に謝り、安心させるための方法なのだ。ストリングを履いた女の子たちは、こんなふうに叫んでいるみたいだ。「私は自立していて、教養も知性もあるけど、でも見てよ、セクシーでしょ。あんたに気に入られることしか考えていないんだから。どんな生き方もできるけど、自分らしい生き方はしないって決めた。女の魅力という最後の武器を使うことにしたから」

若い女たちは「モノ化された女」の持ち物を一生懸命身につけ、体を切り刻み、派手に見せつける。だが、同時に若い世代は「尊敬すべき女」、ようするにわくわくするようなセックスとは無縁な女の価値も認めている。矛盾しているように見えるが、それは表面だけのことだ。女たちは「私たちを怖がらないで」という男を安心させるためのメッセージを送っているのだ。着心地の悪い服を着るのも、歩きにくい靴を履くのも、鼻を整形するのも、豊胸手術をするのも、飢えるのも、わざわざやるだけの価値がある。女らしい体になるための身体改造など、美の支配に対する服従のしるしるをこれほど要求する時代はなかった。同時に、女が身体的にも知的にもこれほど自由に行動できる社会も今までになかった。

 

この部分について私は判断できません。というのも、若い男たちもまたセクシーになっているからです。もっとも大きい要因はジムに行く習慣が広がったことにあります。

 

 

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