松沢呉一のビバノン・ライフ

なぜ自分の性器写真を送ってくるのか—『アニー・スプリンクルの愛のヴァイブレーション』[上]-(松沢呉一)

表現の自由を擁護するヴィルジニー・デパントと表現を潰したがる自称フェミニスト団体とどちらを信頼するのか—ヴィルジニー・デパント著『キングコング・セオリー』[8](最終回)」の続きみたいなもんです。カテゴリーは「キングコング・セオリー(King Kong Théorie)」のままにしておきます。

 

 

 

出会い系サイトで性器の写真を送ってくる男たち

 

vivanon_sentence男においても“見られる肉体の意識”は増大している」という話と通じるのか通じないのかわからないですが、出会い系サイトのサクラをやっている娘っ子からこんな話を聞きました。

「自分の下半身の写真を送ってくる人たちがいるんですよ。大きく見えるように、必ず下から撮る。チンコの先に顔が見える人もいる。こっちとってはどうでもいいんですけど、仕事としてはラッキーなんですよ。“すごい大きいですよね”と返事を出して、そっから話がまた続くので、収入が増える」

自分の顔までを出している場合、リスクが高い。人によっては無防備で、個人を特定できる情報を書き込んでいます。どこに住んでいる、どんな仕事をしているか、どんな家族構成か。

サクラのバイトはそんなことはしないでしょうが、この場合、やりとりする相手が素人の方が怖い。個人特定の情報を誘導して引っ張りだして、顔入りのチンコ写真で脅せばいい。

この話をしてくれた知人によると、相手が登録する時の情報はサクラのバイトも見ることができますが、さすがに本当のことは書いていないにしても、利用者の年齢は高く、50代から60代が中心とのことです。

出会い系サイトが流行ったのは今から20年くらい前でしょう。SNSで相手を探せる時代にまだあるのかって感じですが、時代についていけない人たちがいるのと、サクラの方がツボを心得た刺激的な時間を過ごせるみたいで、今なお利用者は多いらしいですよ。

 

 

女でも性器写真を送ってくるのがいる

 

vivanon_sentenceそれはいいとして、なぜここで写真を送るのか、です。女子校の前でコートをはだけてチンコを出して興奮する人たちと重なっているのかもしれず、「愛される肉体」を得るためにジムに通う人たちとはまた別でしょう、おそらく。年齢的にも違う。

若い利用者もいるにせよ、いい歳こいた人たちでも、チンコ写真を送ってくる人がいるはずで、その歳でも人に見られて恥ずかしくないくらいに鍛えている人もいるでしょうけど、たいていは体が弛緩しているわけで。なのになぜ?

そういえば「表現の自由を擁護するヴィルジニー・デパントと表現を潰したがる自称フェミニスト団体とどちらを信頼するのか—ヴィルジニー・デパント著『キングコング・セオリー』[8](最終回)」で、未邦訳のアニー・スプリンクルの著書を取り上げましたが、唯一日本で翻訳されている彼女の著書であるアニー・スプリンクルの愛のヴァイブレーションにもそんな話が出てました(上の写真がそのページ)。ファンから性器の写真がよく送られてくるのだと。

 

 

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