松沢呉一のビバノン・ライフ

日本女性の口はいつから大きくなったのか、誰が大きくしたのか—唇が物語る[6]-(松沢呉一)

アイドルの唇と演歌の唇は通じている—唇が物語る[5]」の続きです。

 

口紅と社会

 

vivanon_sentenceここまでMVやテレビ番組、コンサートの映像から口紅の変化を見てきました。

当初はざっくりと「赤い口紅からナチュラルメイクへ」という流れを確認すればいいと思っていたのですが、それほど単純ではありませんでした。「和服と口紅」という日本の伝統を踏まえたメイク、「普段着と正装」を峻別するためのメイク、「華」としてのメイク、自身を消すためのメイクなどが見てとれて、一律の流れには組み込まれない口紅がありました。

ポップスにおける口紅の変遷は、日本において口紅と社会との関係がどう変遷してきたのかとリンクしているはずですから、それもざっとまとめておこうと思ったのですが、私には無理。すぐには無理。 今の私がやろうとすると、どうせ一面的なものになって、錯綜する口紅の意味合いを正確には見てとれない自信があります。

たとえば1980代からナチュラル・メイクみたいな動きがあって、口紅の色が赤からピンクにスライドしていったような記憶があって、きっかけは夏目雅子を起用したカネボウかと思ったのですが、違いそう。

 

 

 

 

CMに限らず、夏目雅子はバッチリ赤くしていることが多いようで、私の記憶が改竄されてました。

 

 

口紅の色名から覚えなきゃ

 

vivanon_sentence私は化粧についての関心や知識が薄すぎて、乏しく当てにならない記憶で処理しようとしても間違えます。

「黒味の入った赤」「真っ赤」「ピンクっぽい赤」「オレンジっぽい赤」みたいな区別くらいはできても、それぞれについている色の名称も私は知らない。「ピンクバナナ」と言われれば、「ああ、ピンクのバナナの色か」と想像はつきますが、「テラコッタ」と言われても、さっぱりです。

メーカーによっても色の名称は違うので、一夜漬けでは追っつきません。

口紅だけでなく、化粧についての知識がなさすぎて、そこの欠落を埋めながら作業を進めると時間がかかります。こんなもんに何ヶ月もかけていたら誰も読む人がいなくなります。ただでさえ、このシリーズは人気がないのに。

アマゾンの商品説明に出ていた分類。このくらいは覚えておきたいものですが、これくらいでも覚えきらず、見分けきれず。一般には「レッド/ブラウン/ローズ/ ピンク/オレンジ/ベージュ」の6色に分類することが多いようです。

 

 

「口紅と女性の歴史」を読む

 

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自力では無理なので、このテーマをまとめたものを探したら、慶応大学の学生(当時)が書いた論文がひっかかりました。早坂若子「口紅と女性の歴史(2016)です。

 

 

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