松沢呉一のビバノン・ライフ

スージー・クアトロは唇を赤くしていたか?—唇が物語る[2]-(松沢呉一)

ビリー・アイリッシュの唇、チャルガの唇、デスボイスの唇—唇が物語る[1]」の続きです。

今回もいたって大雑把に時代を見たものです。いずれこれについてはデータまでとってみたいものです。そのための前哨と思ってください。

 

 

ヨーランディの赤い唇

 

vivanon_sentenceMVで時代を完全に読むことは難しい。

DIE ANTWOORDのヨーランディが唇を赤くしているMVがあったはずだと思って探したら。「UGLY BOY」が出てきました。

 

 

ヨーランディが女の色気を振りまこうとしているとはとうてい思えません。

MVの場合は、ミュージシャンの現在をそのまま表現しているとは限らず、しばしばその曲の中だけで展開される虚構世界の登場人物であり、時に曲が揶揄している対象を自身で演じていたりもしますから、その意味を確定させるのは困難です。

また、ミュージシャンの場合は目立つ必要があるので、「誰かがやっているならやらない。誰もやっていないならやる」という選択がなされやすいことも評価を難しくします。特定のMVだけで、「この時代はこうだった」とは言えない。

それでも、複数取り出せば、ざっくりとした傾向は見いだせます。アバウトなものでしかないことを前提に、1970年代以降を見ていこうと思います。

 

 

女性ロック・ミュージシャンたちの唇

 

vivanon_sentence1980年代、あるいは1990年代以降、唇を真っ赤にするミュージシャンは減っていったのではないか。

では、それまでは誰もが赤くしていたのかと言えばそんなことはない。人によりけりです。

スージー・クアトロ

 

 

この映像は1970年代後半だと思いますが、彼女は1960年代からバンド活動をやっていたのですね。バンド時代は知らないですが、ソロになって以降、ほとんど化粧っけがなく、いつもレザーのパンツ姿。動画を観ても、その記憶通りです。ファンデーションくらいは塗ってそうですが、口紅はつけていない。ロック系ミュージシャンのある典型かと思います。

 

ランナウェイズはどうだったか記憶がなかったのですが、以下。

 

 

1977年頃。化粧はキメてますが、唇は目立たず。彼女らは半ばキワモノだったので、雑誌の撮影によっては唇を赤くしていたかも。今も、雑誌や宣材の撮影時とライブは別扱いのミュージシャンは多いでしょうし、テレビやMVもまた別。

スージー・クアトロもランナウェイズも乳は小さめ。

 

 

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