松沢呉一のビバノン・ライフ

日本に寒波、世界に寒波、難民にカンパ—年末年始の銭湯-(松沢呉一)

 

寒波到来

 

vivanon_sentenceここ数日ははどこに行っても「寒いですね」「例年より早く東京にも初雪が降ったんですね」「山陰や北陸の大雪がすごいらしいですね」「名古屋も大雪らしいですよ」なんて会話が聞えてきました。決して大げさではなくて、東京で誰かと出会った時の第一声は95%くらいが寒さや雪についてだったでしょう。東京だけじゃなく日本国中、たいていの場所がそうか。

この延長で、面白い話をしているおばあちゃんがいました。中野駅の近くで、おいじいちゃんと一緒に歩いていたおばあちゃんです。夜の暗い道だったので、はっきりとは見なかったですが、両方とも70代か。おじいちゃんとは夫婦ではなく、どっかの会合で会った近所の人って感じで、おばあちゃんは一人暮らしのようです。

年寄りによくあるように、耳が遠くなって、その分、声が大きくなっているのだと思うのですが、前を歩いている私にもよく聞えてきます。

おばあちゃんはふだん暖房はこたつだけだそうです。

おじいちゃんは言います。

「今日みたいな寒さだと、こたつだけだと凍えますよ」

「だから、家を出る時に暖房を入れてくるんです。そうすると、家に帰った時に暖かいでしょ」

石油やガスだと火事が怖いので、エアコンだと思いますが、家にいない時は部屋を暖かくして、いる時はこたつだけ。家にいる時間の方が長いですから、おばあちゃんなりの節約術です。こうやって石油なりガスなり電気なりを節約して、地球温暖化に抵抗をしているわけです。かどうかは知らないです。

あれだけいろんなところで「寒いですね」という挨拶を耳にしていたのに、「これも気候変動によるものでしょうか」と言っている人は一人としていませんでした。どっかにはいると思いますけどね。

※寒波でも風呂に入ればぬくいので、この時は天神湯に行くところでした。中野駅からもっとも近い銭湯。数年ぶりに行って気づいたのですが、ここの富士山のペンキ絵には勝海麻衣のサインが入ってます。激レア。私は初めて実物を見ました。

 

 

世界規模で見ると…

 

vivanon_sentence日本についてはどこも「数年に1度」「10年に1度」程度なので、「いつものこと」の範疇で、気象庁の記録を見ても、「観測史上最高・最低・最大」といった記録の数はたいしたことがない(観測地単位なので、どこかしら更新するのは「いつものこと」)。よってこれが地球温暖化、気候変動によるものかどうかははっきりしません。

しかし、世界的に見ると、明らかに異常なことが連発していて、はっきりとはしないながら、その中に日本の寒波もあるのだろうと思えます。

12月初頭、米国の北西部にあるワシントン州、モンタナ州、ワイオミング州、ノースダコタ州、およびカナダのブリティッシュコロンビア州では、12月としては観測史上もっとも高い気温を記録していましたが、ここに来てそれらと重なるエリアに寒波が到来して、各地で今季の最低気温を記録しています。カナダではマイナス51度だってよ。

冬の異常な高温はそのあと寒波を招くとの解説がどこかの報道に出てました。温度が高くても低くても異常は連鎖していきます。

インド北部も寒波に襲われていて、ブラジルでは洪水によってふたつのダムが決壊。ここに出した日経の記事では18人死亡とありますが、現地メディアはすでに20人以上死亡と伝えています。寒波の方が人が死ぬので、洪水の死者はたいした人数ではないとも言えますが。

※2021年12月28日付「日本経済新聞」 見出しに「異常気象」とあります。世界中たいていの国では、「地球温暖化」それによる「気候変動」と関係しているか否かを記事内で解説したり、タグをつけたりするのですが、なぜか日本では積極的にはなされない印象です。しかし、日経は比較的積極的。

 

 

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