新しい学校のリーダーズ、八十八ヶ所巡礼、キズ—プチ新年会で聴いた曲-(松沢呉一)
BiSHと新しい学校のリーダーズ
私のインタビューと提供図版で20ページほど作っているムック『懐かしエロカルチャー大全』が完成したというので、数日前に、モダンフリークスに取りに行きました。
メシに行こうと福田君に誘われたのですが、行く途中でパンを買い食いしたので、そんなには腹が減っておらず、モダンフリークスでたこ焼きをやることになりました。具材が足りないので、近所に住むにせぽよに買ってきてもらって、3人で小さなたこ焼き新年会です。
私はこの日福田君に教えられるまでBiSHが今年で解散することを知らずにいました。以前から内々には決定していたのですね。
昨年大晦日に紅白歌合戦に出ていたことも知らなかったのですが、そんなピークで解散する美学はたしかにカッコいい。
今年解散すると、BiSHがこの世に存在していたのはたったの8年間です。ビートルズと一緒。消えたから伝説になります。
では、活動をし続けているローリング・ストーンズがカッコ悪いかというと、そんなことはない。続けることに意味があるとする美学もまたカッコいい。
ジョン・レノンは殺されたから伝説になりました。では、ポール・マッカトニーがカッコ悪いかというと、そんなことはない。
最初からカッコいい存在というのがいて、カッコいい存在はどっちに転んでもカッコいいのです。カッコ悪い存在はどっちに転んでもカッコ悪いのですが、カッコ悪いことがカッコよくなる瞬間もあるので、なんでもいいし、どうでもいいというのが正解。
今は新しい学校のリーダーズの虜
BiSHはあんだけ好きでしたから、解散と聞いて感慨は当然あります。しかし、私はアイドルの熱心なファンでいることは難しいとBiSHで学びました。アイドルのビジネスモデルに乗りきれない。清掃員にはなれない。そこにはついていけなかった寂しさもあります。
適当でいたい今の私は新しい学校のリーダーズの方が気になります。福田君とにせぽよにも新しい学校のリーダーズをプッシュしておきました。
新しい学校のリーダーズはダンスが癖になって、毎日チェックしてしまいます。エチオピアなど、アフリカのポップスではダンスに魅せられることがありますが、日本では珍しい。
「こういうのをどこで知るの?」とにせぽよ。
「YouTubeさんが教えてくれた」
YouTubeが私の友だち。
にせぽよのタトゥは八十八ヶ所巡礼から
写真を撮り忘れましたが、にせぽよは予定通り、新作のタトゥを指に入れてました。「渇愛」と「仏滅」の文字です。
にせぽよは、「好きなバンドが仏教用語を多用し、そのバンドが使っているので、このふたつの言葉を入れることにした」と昨年末に言っていました。仏滅はもともと仏教用語ではなくて、民間信仰の六曜由来の言葉であること、対して渇愛は仏教用語であることはにせぽよから聞いていました。
あのあと読んだ岩野喜久代著『投込寺異聞』に渇愛が出てきまして、文字通り愛を欲するという意味であって、仏教とは関係がなかったのですが、この言葉を使ったのは、岩野喜久代が住職の妻だからかもしれない。
その時はバンド名までは聴いていなかったのですが、今回、「なんてバンド?」とにせぽよに聴いたら、YouTubeで曲を出してくれました。
「八十八ヶ所巡礼かよ」
「知ってるんや」
「YouTubeに教えられて全MVを観ていると思うぞ。こんだけ人の神経を逆撫でする音と歌詞とヴィジュアルとMVが完璧に揃っているバンドはなかなかないだろ」
全然にせぽよとつながっていなかったのですが、たしかに仏滅だし、タトゥだな。
私もこのバンドは好きですけど、にせぽよは気持ちが悪いもんが好きです。カッコ悪いことがカッコよく見える病気に感染。
キズの「ゼロ」
ヴィジュアル系にも気持ちが悪くて好きなのがいて、にせぽよは知っているかどうか聞きたいのですが、バンド名が思い出せない。
「クイズ番組で、答えを間違うとピストルで自殺を強いられて、回答者がどんどん死んで行くMVのバンド」
にせぽよも福田君も知らず。
しばらく福田君が検索して発見。
キズです。キズがバンド名。
映像に目を奪われてしまいますが、曲がいいし、歌がムチャクチャいいのです。声に魔力があります。曲を作っているヴォーカルの名前は来夢(ライム)。場末のスナック。このバンドはこのカッコ悪さをカッコよさに転ずる力があります。
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